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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第10章 涸轍鮒魚
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第78話 迷宮

 それから僕とアレンさんは王族のお願いを聞くことになった。


 お互いに冷却時間が必要だろうということで、アール王子には自室に居るように伝えている。


「実は、大聖女さまに追い払っていただいたクラッシュボアやケルベロスの他にも、あの辺りに凶暴な魔物が多く出ておりましてな……。恥ずかしながら原因が分かっておりませんで……。冒険者に調査させてもみたのですが、全て空振りでして……」

「なるほど、やはりそういうことですか……」


 嫌な予感は大体当たるものだな……。


「やはり、ということは、ソラ様は何か心当たりが?」

「位置的に多分……私が出張るのが一番手っ取り早そうですが、条件があります」

「なんで御座いましょうか……?」

「アール王子とメイドのエドナさんの婚約を認めること、そして王子の待遇改善の二つです――」




「――わりとあっさり認められましたね」


 教皇龍(ハープちゃん)にアレンさんと二人乗りして移動する傍ら、僕らは雑談をしていた。


「相手が大聖女さまなんですから、無理もありませんよ」

「まあ条件を飲まなかったらお二人を私の養子にして王族から切り離すと伝えたからかもしれないですけどね……」


 流石にそれは困ると言い慌てていた。

 

「ソラ様はお優しいですね。サクラがあなたの話をしたがるのも頷けます」

「……たまたま同じ痛みを知る人を見つけてしまっただけですよ」




 ハープちゃんに乗ること数十分、ケルベロスのいた両国の中間辺りに着いた。


「やっぱり、いますね……」


 再び湧いている魔物の群れを見た僕は、辺りに人がいないことを確かめると手っ取り早い方法で処理することにした。


「ハープちゃん、リフレクション・フルバースト!」


 ハープちゃんは唸りをあげ、口を大きく開いて魔力をためるのに合わせて、僕も魔力をハープちゃんに分け与える。

 以前バフォメットに使ったリフレクション・バーストが太い円柱の光線だとしたら、フルバーストは三角錐の範囲光。

 圧縮された白い魔力が拡散する光となって解き放たれる。




 ―――――ィィイイイイイイン―――――




 広範囲を一気に焼き上げ、その中では塵の一つすらも残すことを許されない。


「これが、大聖女さまと教皇龍様のタッグ魔法……」


 湧き出てきた魔物の群れを全て駆逐するも、僕はフルバーストを止めない。


「ソラ様、もう良いのでは?」

「いえ、私の記憶が正しければ、たしかこのあたりに……あった!」


 なにも見えない空間にフルバーストを当てると突如爆発が起こり、僕の探していた洞窟の入り口が見えた。


「あれはまさか、迷宮ですか!?」

「はい。幻影魔法で見えなくされていたようですね」


 もっとも、場所を暗記している僕には隠されても大体分かるけれども……。




 ハープちゃんから降り、迷宮の入り口に入る。


「ここから先はとても危険です。アレンさんなら大丈夫かもしれませんが、それでも結構厳しいと思います。付いてきますか?」


 聖女が中盤の経験値稼ぎに使うような場所だ。


「勿論です!我が身は聖女さまに捧げているのですから」

「そうですか。なら、折角ですし剣術の講義をしながら攻略しましょうか。私の動きを見て学んでください」


 僕は『聖剣アルフレッド』をアイテムボックスから出し、身体強化を施すと飛び付いてきたバフォメットを天井に飛んで躱し、そのまま天井を蹴って脳天から真っ二つに切る。


「承知!」






「次はこっちです」

「しかし、ソラ様は行く道を決めるのを迷いませんね」

「道が分かっていますからね」


 そう言うと、アレンさんは驚きの声を上げた。


「なっ!?迷宮は日によってランダムに生成されるのだと昔の聖女さまが仰っていたはずですが、違うということですか!?」

「いえ、入る度にランダム生成ですよ」


「では、どうして道がお分かりになるのですか?」

「ランダムといっても、100種類の迷路のパターンの中から一つが選ばれるだけです。出る敵は迷宮によって違いますが、100種類の迷路自体はどの迷宮も同様です」

「そ、そうだったのですか……。ですが、100種類の迷宮全てを暗記しているのですか?」

「ええ、大体は覚えています。でも、どちらかというと迷路を入ってから1種類に確定するポイントの方が詳しいと思います」


 百人一首の決まり字みたいなものだ。

 経験値稼ぎをしていると単調作業になりがちだから、道順などを覚えるくらいしか他にやることがない。

 だから必要に迫られたわけでなく、勝手に覚えたというほうが正しい。


「私は一人だったので試せませんでしたが、迷宮はこの世界に100箇所くらいあった気がするので、もしかすると日替わりで迷路だけが変わっているのかもしれませんね」

「そうなれば、世紀の大発見ですよ……」

 

「あ、そうだ。ちょっと寄っておきたいところがあるんですが、いいでしょうか?」

「なんだか実家のような扱いですね」

「実家より通っている気がします……」

「まるで通い妻のようですね……」


 いや、僕が妻なのはおかしいでしょ……。




 目的の小部屋にやってくると、大きな宝箱が置いてあった。


「おお、秘宝ですか!」

「いえ、近付かないで下さい。今のアレンさんだと、()()()()()()から」


 そう言って、落ちている石ころを拾って宝箱に向けて投げる。

 宝箱が独りでに開くと中から腕が出てきて、足も生えてくる。


「さあて、久しぶりのミミックですね……」

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