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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第778話 悪夢

 学園へ行くエルーちゃん達を見送った後、涼花さんと自室で話す。


「本当に学園に行かなくて大丈夫なのか?」

「勉強は問題ないよ」

「流石に万年首席の君にその心配はしていないさ。だがエルー君だって、本当は違うことを聞きたかったはずなんだ」

「違うこと?」

「デモンストレーション当日まではエルー君達とソラちゃんはお互いに干渉しない約束だったが、それが問題なかったのは昼間に学園で会えるからだろう?この二週間、エルー君と一切会わないつもりなのか?」

「一切会わないわけじゃないよ。流石に学園が休日の時は会うし……」


 たとえ僕の方が我慢できても、エルーちゃんの方が我慢できないだろう。

 エルーちゃんの『癒快』は僕だけでなく、触れた相手の心なら誰でも癒す。

 だから別に特段負の感情が大きい僕なんかと一緒にいなくとも、エルーちゃんは他人と触れているだけで徐々に発情ゲージを貯めてしまうことだろう。

 それにもし他人に触れる機会がなくとも、二日に一回はするくらいのエルーちゃん本人が持っている性欲もある。


「ソラちゃんは、何も分かってないな……。エルー君が自分の心配をするわけないだろう?エルー君に触れていなくて心配なのは、ソラちゃんの方だよ」

「僕?」

「本当に平日の間エルー君と離ればなれになって、大丈夫だと思っているのか?」

「そりゃぁ平気だよ。涼花さん、僕はエルーちゃんほど性欲があるわけじゃないよ……?」

「それは疑わしいが……」


 なんでよ。


「そうじゃない!平日の間、ソラちゃんの心の傷を和らげる手段がないことを、分かっているのか!?」


 まぁ、それはそうだけど……。


「それの、何が問題なの?」

「っーー!」


 ダンッ!と机を叩くと、僕の目の前に涼花さんの美麗な顔が来る。


「ソラちゃんは、悪夢を見ているとき、自分がどうなってるのか知らないのか!?」

「えっ?うん、知らないけど……」

「……エルー君は敢えて言わないようにしていたようだな。自分の両腕で!首を!締め上げていたんだよッ!私が全力で止めなければ、死のうとしていたんだっ……!」


 ……それは、僕の想定していなかった答え合わせだった。


 こちらの世界に来て、何度も見た悪夢。

 その悪夢を見ているときは、確かに寝苦しいとは思っていた。

 だが実際には自分で苦しくさせていたとは、なんと愚かな行為をしていたことか。

 いや、寝ている時とは、それほどまでに無防備であるということなのだろう。


「行きすぎた負の感情は、呪いになる。あれは、そういう類いのものだ。エルー君と触れない期間、君がそうなる可能性は大いにある!」


 姉の積年の恨みは、呪いとなって僕を蝕んでいた。

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