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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話209 軍内談

(ひいらぎ)(りん)視点】

「リン様、ソラ様のことをお慕いしていらっしゃいますよね?」

「へっ……!?」


 突如エルーちゃんから言われたことに、私は動揺を隠せないでいた。

 顔が熱い。

 でもそれ以上に、私はまたあの世界での「泥棒猫」という言葉が頭を何度もよぎっていた。


 女性は好意を寄せている人に対して、その周囲の女性関係には敏感になりがち。

 好きな人であるなら、それは尚更なんだと思う。


「わ、私は……」

「今更婚約者が一人増えたところで、ソラ様は問題ないと思いますよ。ですがリン様はお告げになられていない……」

「聖女様が聖女様と婚約するなど、前例には御座いませんからね……」


 そもそも同じ前世で女の子同士だし、年も離れているとなると前例がないというのはしょうがないと思う。


「リン様、もしかしてお告げするタイミングを逃してしまったのではないでしょうか?」

「ど、どうしてそれを……!?」


 私が学園の授業についていったりするのに東子ちゃんに教わりながら勉強したり、園芸部のために庭師の皆さんからお花や手入れのことを教えて貰ったりしている間に、天先輩がエルーちゃんと婚約していた。

 そしてその後もそれに落ち込んでいるうちに、天先輩は婚約者をどんどんと増やしてしまっており、今や10人を超えているという。

 ただでさえ天先輩には負い目があるというのに、その上自分に自信もないものだから告白する勇気も出せなくて、完全に乗り遅れてしまっていた。


「ですから、もしリン様のこのデモンストレーションを口実に力を示すと同時に、ソラ様に想いの丈を告げてみてはいかがでしょうか?」

「で、でも……私なんかじゃ……」

「リン様なら絶対に大丈夫です!婚約者である私が保証いたしますから」


 エルーちゃんのその自信はどこから来るのだろう?

 でも、これを逃せば、私は告げる機会を一生逃すかもしれない。

 ならば側室でもいいから、想いを伝えるべきなんじゃないだろうか?


「み、皆さんっ!よ、よろしくお願いします!」

「決まりましたね」

「ん」

「そういうことでしたら、是非とも協力させてください!」


 天先輩の婚約者の皆、優しい人達ばかりだ。




「我々が勝つには最低限まずは全員のステータスのカンストが必須です。その上で、連携を密にして短期決戦にする必要があります。長期戦を仕掛けるほど、リン様の魔力が足りなくなり不利になります」

「も、もしかしてまたグミ集め……ですか?」

「大丈夫です。ソラ様に教えていただいた最適な周回方法は全て頭に入れていますし、それに五人でやれば効率も五倍ですよ!」

「エルー、考え方がソラ様に似てきた……」

「ふふっ、それは、とても喜ばしいことです」


 多分今の嫌味だったと思うけど……エルーちゃんは心まで強いなんて、勝てるところ無さそう。

 いや、今は私のために頑張ってもらっているのに、敵だと思うのはお門違いか。


「では本日からグミ集めに参りましょう」

「うへぇ……」


 なんだかやる気の無さそうなセフィーちゃんだが、その真意に気付くのは少し後の事だった。

 これが地獄の始まりだということは、まだ私は知らなかった――

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