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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話208 秘密会

【エルーシア視点】

「修行……ですか?」


 放課後、聖女院のリン様のお部屋にお集まりいただいたのは、ソーニャさん、セラフィー様、神流様。


「はい。今のままの私達では、到底ソラ様には敵いません」

「そ、そうですよね。でも、エルーシア()でも、そうなんですか?」


 へっ……?


「リ、リン様!私めに敬語など不要です!ましてや様など……!」

「エルーシア様、リン様は聖女学園の慣例をご存知になられて、そうすることにお決めになられたようですよ。これも不器用なリン様なりの分かりにくいアプローチですよ」

「と、東子ちゃんっ!不器用なのは自覚してるけど、わざわざ言わないで……!」


 リン様は美麗なお顔立ちをしておられますが、とても恥ずかしがり屋さんなのですね。

 涼花様の可愛いもの(ぬいぐるみ)趣味程ではございませんが……これもギャップ萌え、というものでしょうか?

 私も他人の事言えないと思いますが、であればリン様はソラ様の好みのタイプなのかもしれません。


 聖女学園の慣例とは先輩方に対して様を付け敬うという風習のことを指しています。


「ですが、聖女様に様付けで呼ばれるなど……」

「それは、今更では御座いませんか?」


 確かに最近では王家の方々にも様付けで呼ばれることは多くなりましたが、それはあくまで私が聖女院所属の人間だからです。


「序列ではリン様と比べるまでもないのですから、どうか様付けなどは……」

「でも、エルーシア様のことは、尊敬してるので……」

「あの世界を救ったソラ様が信頼を第一に置く未来の奥方様ですからね!」


 東子ちゃんは私に対して、いつも大げさです。


「……わ、私なんてまだまだそんな……!」

「またお義母様の謙遜が伝染(うつ)ってますね」

「病気」


 ひどい謂われようです。


「リン様、私はリン様と仲良くなりたい」

「はい。学園の先輩と後輩ではなくて、お友達にはなれませんでしょうか?」

「皆さん……!」

「私、ソーニャ」

「神流とお呼びください」

「セフィーで構いません」

「どうか、エルーと」

「エルーちゃん、ソーニャちゃん、セフィーちゃん、神流ちゃん……!」

「「「はい!」」」

「ん」

「良かったですね、リン様」




「――話を戻しますが、私と涼花様の二人で挑んだ事が御座いますが、教皇龍(ハープストドラゴン)様が憑依したソラ様には二人がかりでも手も足も出ませんでした」

「お二人とも、ステータスカンストされているんですよね……?もうそれって、五人がかりでも敵わないんじゃ……」

「いいえ、勝算がないわけでは御座いません」


 私の言葉に、ごくりと息を呑む皆様。

 無理もありません。

 歴代最強と謳われ、完全無欠と言われたあのソラ様に勝てる戦法など、およそ口外出来るものではないからです。

 ですが私と涼花様は憑依がなかった時代のソラ様には勝てています。


「私の戦術はステータス的に教皇龍様に憑依したソラ様の完全下位互換。ですが涼花様が魔法破壊で魔法陣を消してくださったお陰で手数はこちらが優勢でした。しかし火力が足りず2つの魔法でソラ様の1つの魔法を相殺することしかできませんでした」

「つまり、五人で手数を増やせば、ソラ様に攻撃を入れられると?」

「そう簡単な話でもございません。ソラ様には最上級魔法が御座います。これは涼花様の無刀『夢幻』でも消すことができません」

「つまり、どんなに防いでも、最上級魔法を使われたら終わりと……」

「はい。ですが今回はリン様がいらっしゃいます。最上級魔法同士で相殺することが可能かもしれません」

「なるほど……」

「それなら勝算は……いや、ですが今のステータス差でそれを受け止められるのでしょうか?」

「いえ、その前にどうしてエルーちゃんは勝つ気でいるのでしょうか?」

「確かに」

「これは、ソラ様やリン様のお力を対外に示す一種のデモンストレーションのようなもの。やるからには全力なのは分かりますが、エルーシア様はまるで勝たなければならないとお思いのように感じます」


 確かに、私としてもソラ様に対して力を示す必要が御座いますが、今回はそれだけではありません。


「それは、リン様の為で御座います」

「えっ……?」

「ああ、そういうことですか……」

「リン様、ソラ様のことをお慕いしていらっしゃいますよね?」

「へっ……!?」

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