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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第765話 雲遊

「うぐ……重い」


 でもこうして大きなベッドで婚約者達と雑魚寝することは、ある意味では幸せな思い出なのかもしれない。


 昨日の一件は半ば意地。

 「信用できない」のは半分嘘。

 たとえ「今日から本番OKです」とか急に言われても、男としては吝かではない反面、心の準備が追い付いてきていなかった。

 だからあんな風に検証とか言って本番をしないようにやり過ごしたのだ。


 魔法でやさしく婚約者達をどかしてベッドから離れると、ベランダにシルヴィがいた。


「おはよう、シルヴィ。朝は涼しくなってきたね」

「旦那様……」


 シルヴィのスタンスは序列重視。

 僕や聖女、そして主である女神エリス様以外の下位序列に対しては基本強気であり、命令口調の王族パターンだ。

 本人曰く「上のものがそうせねば下は迷う」とのことだけれど、それにしても『威圧的な風紀委員』という感じがする。


 でもシルヴィは神の使いである天使だからか、女神エリス様の婚約者である僕に対して一歩下がった接し方をする。

 そのスタンスだけはエルーちゃんと似ているけれど、こと僕に対してはシルヴィは愛情表現すらも押さえるほどで、僕が望まない限り基本受け身だ。


 僕もエルーちゃん以外には受け身だから、蔑ろにはしていないにしても婚約者としてうまく付き合えているかどうかと言われると、微妙かもしれない。

 でもシルヴィはエリス様が作り上げた絶世の美人なんだから、もっと自信をもって良いのにな。

 だからこそ、ここは僕が積極的になるべきなんだろうか。


「ねぇシルヴィ、僕を抱っこして飛べる?」

「え、ええ。構いませんが……」


 えいやと抱きつくと、柔らかい胸が当たって気持ちが良い。

 シルヴィは耳まで真っ赤にしながらも、ゆっくりと地上を離れていく。


 ちょうど陸を離れてすぐエルーちゃんがベランダを眺めていたようで、窓越しに手を振ってくれていた。


「シルヴィ、僕はシルヴィのこともちゃんと大好きだからね」

「だ、旦那様……!飛んでいる最中に集中力を切らすようなこと仰らないでください!」


 この美人が僕の一挙手一投足で乱されるのが愛おしくて、思わず尖った耳に口づけをする。

 天使も羽はあるけど羽ばたかせて飛ぶのではなく、羽に魔力を乗せて飛ぶらしい。

 これはドラゴン……もといハープちゃんと同じみたいだ。


「今は空だから見えていても豆粒くらいで何してるか分かんないし、聞こえてもないよ。それより元気無さそうだけど、何かよくないことでもあった?」

「……旦那様は、何でもお見通しですね」

「よく見るようにしてるから。顔をみれば何となく考えていることくらいは分かるものだよ」


 いじめられてきたからこそ、他人の表情にはいちいち敏感だった。

 特に悲しい感情、怒りの感情はよくぶつけられてきたから分かるものだ。


「旦那様は、お優しいのですから……」


 たそがれているときのシルヴィはなんだか触れると壊れてしまいそうな砂のお城のように脆く感じた。

 だから僕が繋ぎ止めておかないとと思って、余計な気を回したのだ。


「僕には聞かせられないこと?」

「私は別に構いません。ですが、旦那様が……」

「僕のことなの?」

「はい」

「大丈夫。聞かせて、僕の婚約者様」


 シルヴィにも幸せになってほしい。

 そう思って抱き締める力を強めると、覚悟を決めたのかシルヴィも抱き締める力を強めてくれた。


「先程、主から共有されたものですが……旦那様、よく落ち着いてお聞きください」

「うん、なあに?」

「先程、旦那様の母親である美空が、自殺しました」

「えっ……」

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