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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第761話 我儘

 アヴリルさんの性格的に少しは渋ると思ったのだけれど、ちゃんと修行をしてくれることになった。

 『奈落』は聖女院管理だったため冒険者のレベルは高く、アヴリルさんもレベルは100だったのでグミ集めをして貰う方針だ。


 婚約の件はエルーちゃんに「据え膳ですよっ!」と言われてしまったので貰い受けることに。

 決定打となったのが「血を吸われながらするとゾクゾクするらしいよ」という言葉が、えっち魔人の()的好奇心をくすぐってしまったらしい。

 意図せずに『聖寮院』の管理人が全員婚約者になってしまった。


 ともあれ『聖寮院』の管理者でなくとも、僕の婚約者になった人にはステータスを最低限まで上げて貰うようにしてもらっている。

 数年周期で定期的に魔王が復活する以上、聖女院や聖女が狙われる可能性が高い。

 そうなった時に一人でも退治できるくらいのステータスを持っていればより安全だろう。

 流石にグミまで行かずとも定期的に親衛隊が迷宮に付き添ってレベルアップすることをメイドさん等の聖女院で働く人全員に推奨している。


 まああと僕の婚約者は僕やエルーちゃんとその……致すときにステータス差がありすぎると、手加減を間違えるだけで惨事になることがあるからね。

 「男は狼」程度ならまだしも、僕の場合化け物だろう。

 治せるからいいとかではなく、そんな理由で怪我させたくはない。


 要職に就いてしまっているマヤ様、エレノアさんに関してはグミ周回をさせているわけにもいかないので、僕が持っているグミを食べて貰うことになっている。

 ソーニャさんもクラーケンを狩りまくってレベルがカンストしたらしく、迷宮グミ集めに移行している。

 彼女曰く、Sランクになるまではズルは無しと決めていただけで、そのうち僕の特訓をする覚悟はしていたらしい。




 エルーちゃんと聖国に戻って孤児院『カエデ』を訪れる。

 敷地の購入は既に済んでいるので、孤児院カエデの周りには何もない。

 ただ敷地の範囲を現すために塀で囲ってあるだけ。


「しかし、広いね……」

「いくら聖国の首都近くとはいえ、土地を買うだけで普通聖貨2000枚も使いませんからね?」


 このお金で豪邸が軽く20件くらいは建つらしい。


「こっちの世界での金銭感覚が狂ってるのは認めるけど、使い切るにはそれくらいかけないと駄目だったんだよ」

「最早聖女資本金を使いきることが目的になっておりませんか……?」


 それは僕もそう思う。

 でもこの間の西の国(セイクラッド)でまた増えちゃったから、最早目的と手段が逆になっていようとやらねば一向に増えていってしまう。


「ソラさまだ!」

「ソラさま!」

「院長先生もこんにちは」

「本日はいかがなされましたか?」

「以前お願いしていたものを受け取りに来ました」

「でしたらソーニャが纏めております」

「ん」


 どうやらソーニャさんも居たらしい。

 紙束を渡してきたので、僕はそこに目を落とす。


「こちらは?」

「今の孤児院『カエデ』のなるべく詳細な情報だよ」

「詳細な情報、ですか?」

「構造だけじゃなくて、例えば身長計るために壁に線付けたり、そういった思い出とかのことだよ」

「みんなで思い付くだけ、全部纏めた」

「ありがとうございます。今から一緒に一通り見て回りましょう」


 お祖母ちゃんの遺言で作り直していいと許可は得ているものの、ここには沢山の孤児やそれを支えた人達の思い出がある。

 作り直すにしても、できる限りは再現してあげたい。


「こっちの台詞」

「ふふ、ソラ様はやっぱり婚約者思いでございますね」

「単に私のワガママだよ」

「そういうとこ」

「そういうところですっ!」


 なんで僕が悪いみたいになってるの?


「夜で返すしかない」

「どうしてそうなるのさ……別に私は、二人が笑顔で居てくれるだけで、幸せだよ」

「……今日の夜、覚悟して」

「……そうです、覚悟してください!」


 なんで捨て台詞みたいに言うのさ。

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