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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第756話 聖寮

 エルーちゃんとマリちゃん先生も連れて一旦聖女院に向かう。


「先生、おまた、違和感ないですか?」

「まだ指の感覚はありますがっ、大丈夫ですよっ、エルーシアさんっ!」


 こんな往来でそんな話しないでよ。


「と、ところで先生!学園、今年で辞めちゃって大丈夫なんですか?」

「どうせ結婚したら辞めるつもりでしたしっ、別にクラフト学は私だけで教えているわけではありませんからねっ!それに聖女院のクラフト研究室に入れるなんてっ……大出世ですよっ!」


 「婚約者になる以上は今後も一緒に居たい」という健気なマリちゃん先生の要望で、とりあえず僕からはクラフト研究室に推薦しておくことにした。

 昔はどうだったか知らないけど、今のマリちゃん先生なら流石にクラフト学の知識は豊富だろうし、あのクラフト界の天才であるエレノアさんとの話についていけるクラフト知識を持っている時点で合格だろう。

 うちの研究室員ですらたまについていけてないしね……。


「でも今のクラフト研究室の女性職員さん、ほぼほぼマリちゃん先生の生徒さんですよね?」


 聖女院で働く人の中には聖女学園の卒業生が結構いる。

 聖女院クラフト研究室副室長のエレノアさんもマリちゃん先生の生徒だし、それにマリちゃん先生は聖女学園クラフト研究部の顧問でもある。

 その上アンネ室長はマリちゃん先生の聖女学園時代の同期で、二人ともクラフト研究部に所属していたらしい。


「彼女達は私となんて比べるまでもなく優秀でしたよっ……」

「マリちゃん先生、そんなに自分を卑下しないでください。というか、学園教師は立派な職業です。マリちゃん先生はもっと給料を貰ってもいい存在です!」


 いち貴族であるクロース辺境伯家にそんな無理難題を言うつもりはないけれど、聖女院の給料が良すぎるのは事実だ。


「いえっ、給料は足りていますから別にっ……。それよりっ、教えるのが好きだった性分のようでっ、少し寂しいのですよっ……」

「マリちゃん先生ならそう言うと思って、いい役職を用意してますよ!」

「えっ……」




「西の国の別荘っ、ですかっ?」

「はい。今度各国にある孤児院を増設改築して『聖寮院』というものを作るつもりなんです。『聖寮院』の区画は大きく分けて三つ。私達聖女が寝泊まりする別荘区画、孤児達を養う孤児区画、そして最後が一般開放区画。その一般開放区画内で掃除や警備などをして働くかお金を支払うことで『聖女チケット』を得られ、そのチケットで食事や浴場の利用、授業を受けたりすることができます。『聖寮院』は聖女院の敷地の中。ですから貴族も王族も平民も、この中では権力を振るうことはできません。ただ学び、食べ、身体を綺麗にし、仕事を学び、生活をする。そんな場所を作りたいと思っています」


 これを実現するためには、今まで暇をもて余していた聖影の協力が必須だ。

 私服警備員として変装して『聖寮院』に紛れ込み、治安維持活動に従事して貰うことで、貴族や王族が幅を利かせようとしたり、生まれや性別、種族ですることをよしとしない。


 聖女チケットをお金で買えるようにしているのは、そうしないと我々の預かり知らぬところで平民のチケットが貴族や王族に奪われたり買われたりしてしまうからだ。

 盗まれてもそこまで意味がないようにするために、聖女チケットにはそれほどの価値を持たせない方がいい。

 一応各人の出納の記録は取るつもりなので、買収していればいつかはバレるだろう。


「マリちゃん先生には、その『聖寮院』の管理人をお願いしたいのです。管理人とは別に執務官を付けるので、要は『聖寮院』において最終決定権を持つ人ですね。我々聖女が全部見ているわけにもいかないので」

「ええっ!?そんな大それた役っ……」

「いえ、任命されたからといって、特に制限があるわけじゃないです。一週間に一回くらいの頻度で顔を出して、滞っていたら手をつけるくらいの感覚でいいんです。だからそれ以外の時は何してもいいってことですよ」

「?」


 ピンときていないマリちゃん先生が首をかしげる姿が可愛くて思わず頬擦りをしてしまう。


「さっきも言った通り、一般開放区画では授業を行います。授業をするには、『先生』が必要ですよね?」

「ああっ!?」


 まるで猫みたいな反応、可愛い。


「まあマリちゃん先生の中では答えはもう出てそうですけど、これから南の国で面接と聖国での設営業務があるので、それを一緒に見ていただいてから決めて構いませんよ」

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