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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第4章 韋編三絶

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第75話 盛装

 昼頃に西の国(セイクラッド)に到着した僕達。

 アレンさんからは明日王城へ向かうと言われ、今日は自由時間となった。


 僕はエルーちゃんと相部屋となった。

 本当はアレンさんと相部屋がよかったんだけど、それだと逆に角が立つから仕方なくこうなった。


「ごめんね、エルーちゃん……」


「い、いえ……私は大丈夫ですから! むしろ、お世話できるのは嬉しいです!」


 そんなことを言ってくれるが、顔は赤いままだ。

 気まずい空気を書き消すかのようにトントンとドアがノックされる。


「あの、シエラ様……」


 エルーちゃんが開けると、セラフィーさんとシェリルさんが入ってきた。


「お二人とも、どうかしましたか?」


「あの……よかったら一緒に街を見て回りませんか?」


「良いですけど……」


「でしたら、私はお留守番しておりますね!」


「いや、エルーちゃんも一緒に……」


 そう言おうとしたら、エルーちゃんに耳元でこう言われた。


「恐らく、()()水入らずで回りたいのだと思いますよ……」


「んんぅ……!」


 エルーちゃんの声が間近で聞こえ、カラダ全体がぞわっとする。

 ()()()()()()()を覚えた僕は、思わず床にへたりこむ。


「み、耳は弱いからやめてぇ……!」


「も、申し訳御座いませんっ!」


 平謝りするエルーちゃん。


「な、なんだか凄く……えっちです」


「なるほど、流石は神様に愛されたお方……とても敏感でとても煽情的なお声ですね」


 なに変な分析してんのさ、シェリルさん……。

 別にエリス様はそんな理由で好きになったわけじゃないと思うけど。


「私はこの間聖女祭でご一緒しましたから。 シェリル様、セラフィー様、シエラ様をよろしくお願いしますね」


「エルーシア様……でしたら明日は三人で見て回りましょうね!」


 そして僕がへたりこんでいるうちに決まってしまった……。



 ◆◆◆◆◆



 西の国は、比較的街中にも水が多くあるような水の都ともいえる。

 ここは港とも近く、緩やかな山から流れる河が沢山あり、その河と河の間に石で橋を立て、住居を構えたのがこの街のスタートであるとされている。


 水が身近に手に入りやすい環境にあった西の国では、当時の染めるために大量の水が必要だった環境から、染物が流行り、そして染めるために布を集めるようになった。

 西の国の染物が他国にまで流行するようになると、職人がこぞって西の国に集結し出し、やがて布を生産するようにまでなる。


 水道も発達した今では染めるために河の水を使うようなことはなくなった。

 けれどそのお陰で水も綺麗になり、なだらかな水流がゆったりと流れながらその水面で石橋を反射し、素敵な景色を作り上げている。


「シエラ様は、行きたいところはございますか?」


「うーん……折角ですし、聖徒会の方々とサクラさんにお土産を買っておきたいですね。 そうですね、着物をクラフトする為に質の良い生地を探そうかと思っています」


「それはいいですね!」


「シェリルさんとセラフィーさんは、行きたいところはありますか?」


「あ、あの……」


 そう言ったとき、二人は少しもじもじとし始めた。


「はい、なんでしょう?」


「シエラ様さえよろしければ、私達のことは……呼び捨てで呼んでくださいませんか? シエラ様は私達のお義母様ですから、他人行儀なのが少し寂しくて……」


 お義母さんというより、お義父さんなはずなんだけども……。

 でも、確かに親に他人行儀にされるのは嫌か……。


「でも私も、呼び捨ては苦手なんですよね……」


「でしたら私達に愛称を付けてくださいませんか?」


「うーん……じゃあ、セフィーとシェリーでどうでしょう……?」


「はいっ!」


「あの、できれば敬語も……」


「わか……ったよ、改めてよろしくね、シェリー、セフィー」


「「はい!」」


 改めて仲良くなったところで、僕達は目当ての服飾店を見つけた。

 事前にシェリーがおすすめのお店を調べてきてくれたようで、こうして案内してくれたのだ。


「お義母様、そのドレスもお似合いです」


「もう、お義母さんだなんて言っていいのは今だけだからね? 学園では、内緒なんだから……」


「勿論です、任せてください!」


 そんな自信満々に言われると、かえって不安だよ……。


 試着室で僕は服をたくさん押し付けられ、着せ替え人形になっていた。


「こういう足が出るやつは、恥ずかしいよ……」


「その恥じらいも、とてもいいと思います!」


 なんかシェリー、だんだんメルヴィナさんみたくなってない……?


「私ばかりじゃなくて、二人も着てみたら?」


「ですが……」


 ん……?


「その、お金が……」


「なっ……そんなこと気にしてたの!?」


「で、ですが、大切なことで……」


「旅行の時くらい全部私が払うから、大丈夫っ!」


 僕の財布なんて今まで勝手に盗まれても何も言わなかったから、まさかそんな杞憂をされているなんて思ってもみなかった。


「むしろこの間また増えちゃって……孤児院に寄付するくらいしか使い道なかったんだから……」


 むしろソーニャさんに「寄付しすぎ」と断られてしょぼくれかえっていたくらいだ。

 いいじゃん、お祖母ちゃんの形見みたいなもんなんだし。

 改修費くらい出させてよ……。


「いーい? 確かにお小遣いは渡してるし、無駄遣いをしろとまでは言わないよ。 でも、皆の幸せと貴女達の幸せ、そして夢を追いかけるために必要だと思うなら、遠慮はしないこと!」


「で、ですが……!」


「むしろ、『私を利用してやる』くらいの気持ちでいいの!」


 僕はシェリーとセフィーにそれぞれ白金貨を渡す。

 およそ十万円くらいの貨幣があるというのは、異世界ならではだ。


「こ、こんなに使えませんよ!」


「使わなかった分はお小遣いの足しにでもして」


 親バカかもしれないけど、遠慮しがちな二人にはいい薬だろう。


「前にも言ったでしょう? 貴女達がやり直すためには私は投資に妥協はしないから。 むしろ、貴女達が渋ったから失敗したなんて言ったら、一生許さないからねっ!」


「は、はい……そこまでおっしゃるのでしたら……」


 プンプンと怒る素振りをする僕にはにかんでくれていた二人を見て、僕も笑みを押さえられなくなってしまっていた。

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