第752話 不審
なんだかマリちゃん先生の様子がおかしい。
いつもよく見ているからわかる。
授業中時々目が泳いでるし、何より、僕と目が合わない。
こんなこと今まで一度もなかった。
何か悩みでもあるのだろうか?
「きょっ、今日の授業はここまでですっ!ではこれにて失礼っ!」
口調もなんだかおかしいし、何かあったんだろうか?
「今日のマリちゃん先生、なんかキレがなかったですね」
「マリエッタ先生の元気さをキレのよさで表しているあなたも大概ですけれど……」
「挙動不審」
「なのは確かですね」
「私のせいかも」
「えっ!?」
ソーニャさんのせいって、どういうこと?
「ああ、確かにあれはソーニャちゃんのせいかもしれません」
「セフィー!?あなたまでなんてこと言うんですか!」
「ええと、リリエラ様……失言ではないですから。ソーニャちゃんのせいではありますがソーニャちゃんが悪いわけでは……」
なんだか要領を得ない回答だ。
「シエラ、お願いがある」
「えっ」
「マリちゃん先生の悩み、シエラなら解決できるかも」
「そ、そうなの!?」
「そ、そうですね……」
なんだかよくわからない……。
「はぁっ……」
「マ~リちゃ~んせ~んせ!」
「はっ、はひぃぃぃっ!?」
放課後、聖徒会の集まりもなかったので職員室に入ると、ビックリしていた。
すごい驚きようだ。
「どっどど、どどうど、どどうど、どどうしたんですかシエラさんっ!?」
「そんな、又三郎じゃないんですから……」
後ずさろうとして椅子から転げ落ちるマリちゃん先生こそどうしたのさ?
「青いくるみも吹き飛ばす風」というより、くるみみたいな口して今にも吹き飛ばされそうに震えてるんだけども……。
「又……三……三又っ!?」
いや、最早なんの話よ。
「もしかして今日のマリちゃん先生が元気なかったのって、私のせいですか?」
「そっ、ソンナコトッ、アリマセンヨッ!」
カタコトなってるよ。
「よろしければ、お悩みをお聞かせくださいませんか?」
「えっ、えぇっとぉっ、そっ、そのぉっ~~……」
「私では、お力になれませんか?」
「そっ、そんなことはっ、ないんですけどっ……ここでする話でもないというかっ……」
ああ、確かに他の人がいる職員室でするような話じゃなかったか。
「屋上にでも行きますか。はい、どうぞ」
いつものように抱っこを受け入れるポーズを取ると、もじもじして可愛いマリちゃん先生がそこにいた。
「ほら、時間がもったいないですから早く」
「あっ、ちょっ……シエラさんっ!?」
久しぶりの抱き心地、どんなぬいぐるみより素晴らしい。




