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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第744話 社畜

「止めなさいって言われましても……」


 すがり付くように手を取るサツキさんの要望を叶えてあげたい気はする。

 でも……。


「うーん……普通に無理だと思いますよ?」

「くっ……まさかソラちゃんがブラック企業的価値観を持った(サブロクブレーカー)だったなんて……!?」


 なんだよサブロクブレーカーって。

 魔法(マジック)カードの代わりにタイムカードでも破壊して、下がった攻撃力のせいで狂戦士(バーサーカー)の魂を持ちそうなあだ名付けないでよ。


 というか本当にブラックなら、法を破るんじゃなくて情報を(タイムカードは)隠匿する(切ったことにする)んじゃないの?


「そもそも、私も聖女院の皆さんは働きすぎだと思ってますよ。だからルークさんとかよく注意してますし、それを改善するためにリリエラさんを秘書にするみたいな特例を許しているんですから」

「な、そ、そうだったのね……」

「敵を見誤らないでくださいよ……。というか、サツキさんも分かっているでしょう?」


 僕は振り向いてエレノアさんを指差す。


「そもそもこの人、私が止めても、無駄でしょう?」


 そう、たまにいる亜種。

 研究というものが仕事とも思っていないのだ。

 発明を考えているのが、仕事をするのが楽しくて楽しくて、時間を忘れてしまうような人種だ。


 どちらかというと、今の正確な構図は働かせたくない聖女 VS 働くことをやめないエレノアさん。

 つまり今、我々の共通の敵はエレノアさんなのだ。


「この人、食事中とかお風呂とかトイレとか、どんな時でも考え込むと何もかもやめて寝もせずに考え込むんですよ。残業させようがさせまいが、この人は一度考え始めると満足するまで終わらないんです」

「ひどい謂われようだな……まあ、事実だが」


 えっちなことしてる最中だけは僕のことしか考えていなかったようだけれど、それが終わるとまた考え始めるのだから、もうそういう性分なのだろう。


「そうなのよ……だからお願いしてるの!こんなの、止めようがないじゃない!」


 彼女は残業代としてお給金を貰えずとも別に構わないから、ことクラフト研究において残業という概念がないのだ。

 だっておはようからおやすみまで常にクラフト研究のことを考えているから。

 何なら、夢の中でも考え事してそうだよ。


 まさに今彼女のTシャツに書かれている通りの「社畜」だ。


「んー……方法がないわけではないですが……」

「ちなみに、どんな方法だい……?」


 僕はエレノアさんに「定時になったら私の部屋に連れ込んでひたすらエレノアさんにえっちなことして疲れさせて寝かせます」と耳打ちすると、ぼっと顔を赤くしていた。


「な、なんて恐ろしいことを考えるんだ……キミはッ!?」


 いやだって、僕としている時じゃないとエレノアさんの意識がこっちに向かないし、頭が疲れないのなら身体を疲れさせるしか方法がないじゃん。


 でもこれから彼女も婚約者になる以上、聖女院の人達やサツキさんに迷惑がかかるのは本意ではない。

 どのみち後宮のメイドを雇うつもりでいたから、ついでに解決しなきゃいけない問題だろう。


 でも、エレノアさんに規則正しい生活をさせられる人なんて……。


「あっ……」

「「?」」

「エレノアさんの残業の件、案外なんとかなるかもしれません」

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