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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第743話 残業

「お、お義母様……」

「ま、まさかセフィーまで……」


 予想外だった。

 いや、考えないわけではなかった。


「わ、私はお義母様が好きです。お義母様の匂いが好き……笑顔が好き……。本当は見ているだけでも良かったんです。でも、お義母様がたくさんお嫁さんを取るものだから、欲が出てしまったんです」

「セフィー……」

「お義母様は、私のこと……家族としてでしか見られませんか?」

「そんな聞き方、ずるいよ……」


 僕はセフィーの肩を掴んで顔を見る。


「母親として真面目な話をするよ」

「は、はい……」

「それが、セフィーにとって一番の幸せ?」

「はい。お義母様のお側に置かせてください!」

「わかった。エルーちゃんも大丈夫?」

「はい。ですがソラ様、肝心なことを言い忘れていらっしゃいますよ」

「……」


 本来、父親が娘に手を出すのは駄目だと思うんだ。


「セフィー、愛してるよ」

「お義母様……」




 翌朝。


「おはよう、皆」

「おはようございます、ソラ様」


 もう婚約者が10人にもなってしまった。

 知り合いだと断れない病気にでもかかっているのか、僕は……?


 いや違うんだよ、みんな素敵な人達なんだ。

 人から好意を抱かれたこともなければ優しくされたこともなかったから、僕はそういうのに弱いんだと思う。


 大きなくまさんベッドでも手狭で、横にベッドを置いて巨大ダブルベッドにする始末。

 昨日は色々とすごかった。


「ソラ様、先程後宮のご用意が出来たそうです。本日からはそちらでご寵愛いただけますね」

「もう夏休みも終わりだから、暫くは我慢になるかな」

「そ、そんな……」


 エルーちゃん、すごいがっかりしてる。

 流石に女子寮で異性交遊は、あのフローリアさんでも許可しないでしょ……。


「とりあえず起きてる人で見に行こっか」

「はい!」

「愛の巣」

「どんなものなのでしょうか?」

「大きなベッドと、各自のプライベートルームと寝室があるみたいだよ」


 いくら婚約者同士でも、プライベートな時間を持ちたい人もいることだろう。

 エレノアさんとかはそんな感じで、寮でも部屋に籠るタイプだった。


「ソラちゃん!」

「おはようございます、サツキさ……」

「ちょっと部屋来てくれる!?」

「えっ、ちょっ……なんですかぁっ!?」


 奥からすたすたと早歩きで胸を揺らしながら歩いてくるサツキさんが僕の手を掴むと、そのままサツキさんに連れていかれてしまった。




「あなたの婚約者、いったいどうなってるのよ!?」

「ええと、ごめんなさい。婚約者いっぱいいて……誰の話してますか?」

「そ、そんな……!ソラちゃんが……ハーレムなんて作って……!?」


 僕が男なことは秘密なので、ちゃん付けするようにしてもらっている。


「いや、その話は今はいいでしょう」

「んんっ!そ、そうね……。ええと、エレノアちゃんよ!」

「ああ、確か今電気供給システムの研究開発しているんでしたっけ?」

「それはもう終わったわ」

「早っ!?サツキさんって、そんな凄い人だったんですね」

「違うわよ。私も電気整備士でもなんでもない、アバウトなパソコン周りの知識があるだけの女よ。けど知ってる知識ちょっと話したらエレノアちゃんは魔力で電気を作って各地に送る仕組みと試作機を全部一人で作っちゃったのよ!」

「なんですかそれ……」


 クラフト界の天才、恐るべし……。




「入るわよ!」


 サツキさんはクラフト研究室まで僕を引っ張ってくると、そう言って扉を開けた。


「普通にやってることがおかしすぎるんですよ」

「ボクとしてはキミの戦闘技術とこの世界の知識の方が頭おかしいと思うけどね」

「二人とも頭おかし……って、そんなことはどうでもいいのよ!」


 部屋に入るといつものように「社畜」と熟語が書かれたブカブカのシャツを着て目の下にクマをつくったエレノアさんがいた。

 クマさんは好きだけどクマを作るエレノアさんはあまり好きじゃない。


「サツキ様、ボクの婚約者を連れて、どうかしたのかい?」

「お願いソラちゃん!この子なんとかして!」

「?」

「だ、か、ら!この子の残業時間よ!」

「あっ……」


 予てより王家であると知る前も研究十割な生活をしていた節はあった。

 寮でさえ不規則な生活をしており、食事を抜いて部屋に籠ったり、一段落つくまで寝なかったりとひどい有り様だった。

 そして王家の職務がなくなった今、エレノアさんはその生活に戻ってしまったのだ。


「私はブラック企業の管理職だったからこそ、この世界でそんなことは許しません!あなた婚約者でしょう?責任をもってエレノアちゃんを止めなさい!」

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