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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第741話 始末

「リニューアル?」

「ええ。私は抜け道を探していたのです」


 やっと見つけた、僕の抜け道。


「私はこれまでずっと『カエデ』に寄付していました。でもそれはあくまでも食費や娯楽、修繕費に充てられるのみ。でも『カエデ』はお祖母ちゃんが遺した聖女最古の文化遺産でもあります。だから気軽に改修なんて出来なかったんです」

「ソラ様は、一度壊して作り直したいの?」

「本当は壊したくない気持ちもあります。でも、ソーニャさんは知ってますよね?孤児院『カエデ』の修繕の実情を……」

「ん……」


 ソーニャさんは頷くだけだった。


「ソラ様、どういうことかしら?」

「『カエデ』はお祖母ちゃんがいた時に作った、何千年も前の施設。当時は建築の主流だった日干しレンガを使用していました」

「日干しレンガ、ですか。焼いたものとどう違うのでしょうか?」

「日干しレンガは耐水性と耐久性がないんです。ですから、湿気に弱く、更に魔法も剣も習っている元気すぎる子供達では、すぐに壊れてしまって。それに、今時日干しレンガなんて誰も使わないものだから、作っているところもほとんどない。安く作れはしますが、作る側からすると売り手がいないのに作るメリットがない。だから専用の工房に頼むのですが、余っても他には売れないためほとんど『カエデ』の修繕専用に作るうえ、出来上がるのに時間がかかる。だから今一般に流通しているの焼レンガより出費がかさむんです」

「今までは王家や貴族、ソラ様の寄付した修繕費のお陰でなんとかなってきた」


 『カエデ』は聖女史的な歴史財産と見られていた節がある。

 だからこれまで焼レンガに変えたりせずにずっと日干しレンガで補修を行ってきたし、それで多少出費がかさんだとしても、貴族や王家の寄付で保ってきた経緯がある。


「でも、これでは無駄にお金を使うばかりです。本来お金を使うべきは子供達に対してであるのが望ましいのに、その子供達が施設の保持のために質素な暮らしを強要されるのは違うと私は思います」

「でも、『カエデ』は初代聖女、嶺楓様の遺産。ソラ様にとっても、とても大切なものでは……?」

「うん。でもね、お祖母ちゃんの日記にあったんだ。『今はこれくらいしかできないけれど、いつかもっと国が発展したら、その時は今よりもっと良いところに住まわせてあげたい。()()()()()()()()()()()』」


 お祖母ちゃんの家族は、僕の家族。

 僕がこれから守っていくべきなのは、お祖母ちゃんの遺した居場所じゃなくて、お祖母ちゃんの遺した家族だから。


「多分歴代聖女のみなさんは、本当はこのことに気づいていたんです。でも初代聖女の、お祖母ちゃんの場所だからって、みんなのやさしい思いやりが結果よくない方向にいってしまった」


 奏家も嶺家も、もう聖女は来ない。

 だからお祖母ちゃんの始末をつけられるのは、きっと僕だけなんだ。


「マヤ様には北の国(フィストリア)のエドウィン家の孤児院、神流ちゃんは東の国()の嶺家の孤児院、ソーニャさんは聖国(ハインリヒ)の孤児院『カエデ』、それぞれをリニューアルした別荘の新しい管理者になっていただけますか?」

「「「……」」」


 突然のことだ。

 僕は彼女達なら適任だと思っているけれど、考える時間はまだある。

 いくらでも悩んでもらって良い。


 そう思っていたら、ソーニャさんが手を上げた。


「一つ条件がある」

「なんでしょう?」

「私を、もらって」

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