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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第10章 涸轍鮒魚
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第73話 魔獣

「敵は?」

「は、はい……。あちらに」

「……なるほど。これはまずいですね……」


 ゴブリンやボアのような軽い敵も混じっているが、問題はケルベロスの群れだ。


 一匹でも冒険者でも髙ランクの人でないと対処できないらしく、これはどう見ても学園生の手に余る。


「皆さん!ケルベロスは私が対処しますから、各自自分の身を守るように!」

「「は、はいっ!」」


 そう言うと、アレンさんは身体強化でケルベロスのもとへ突っ込んでいった。




 僕も行きたいが、皆の安全が優先だ。


「ひぃっ……」


 飛び付いてくるゴブリンに嫌悪感を示す子達。

 僕はそれを障壁で守る。


「ライトニング・ストーム!」


 リリエラさんがそう唱えると、雷の渦が巻きゴブリンとボアの群れの一部を吹き飛ばした。


「落ち着きなさい!貴女達も学園で対処法は習ったでしょう?それをやるだけよ!」

「は、はいっ!」


「ブリザード・テンペスト!」

「エルーちゃん!」


 エルーちゃんも中級魔法で魔物の群れをまとめて凍らせた。

 よかった、二人は怖がらずに動けるみたいだ。


「いきますよ、エルーシアさん!」

「はいっ、リリエラ様!」


 二人は並んで立つと、杖を構えて合わせる。


「「ライジング・グレイシア!」」


 先程の倍の広い範囲をまとめて覆い尽くす合成魔法で魔物を焼き凍らせる。

 この間の連携の授業が活きているようだ。


「シエラ様、ここは私達にお任せを!」

「アレン様のところ、行くのでしょう?」


「エルーちゃん、リリエラさん!ありがとうございます!」


 僕は仲間に感謝し強化魔法で瞬時にアレンさんのいるケルベロスの群れへと向かった。




 アレンさんは複数のケルベロスに囲まれていた。


 くるっとジャンプして一匹の頭上から背後に回ると、着地してそのまま横に一刀両断する。

 ケルベロス退治の基本は押さえているようだ。

 しかしその隙に挟み込まれ、二匹のケルベロスからバーニングブレスを放たれる。


「あぶないっ!」


 僕はブーストしてアレンさんの前に移動し、両方のブレスの間に入ると両方にリフレクトバリアを張って弾き返す。


「ソ……シエラさん!助かりました。」

「アレンさん、私のそばに来て!」

「あの、何を……」

「横になって伏せて!……早く!」

「し、承知!」


 アレンさんはがばっと匍匐(ほふく)する。


 今は皆の手前最上級魔法が使えないが、別に最上級が使えなくともやりようはいくらでもある。

 僕は生徒達から十分離れていることを確認し踏み込むと、まるでフィギュアスケートの選手のように回転ジャンプをして真横から角度をほんの少しだけ下に杖を構え――


「デュアルディバインレーザー!」


 回転したまま両杖からディバインレーザーを放つ。


 ほぼ真横に伸びた白いディバインレーザーは緩やかな三角錐の形をして周りにいたケルベロスをすべて焼き真っ二つに切断した。


「す、凄まじい……」


 辺りに土煙が混じる中でゆっくりと着地すると、アレンさんがそう感想を漏らした。


「ふぅ……ちょっと目が回りました……。慣れないことはするもんじゃないですね……」


 しかし、ゲームのときにお遊びでやっていた縛りプレイが活きるとはね……。


「いえ、助かりました。ありがとうございます」


 アレンさんはそう言って僕のことを支えてくれた。




 アレンさんに肩を借りて馬車に戻るとこちらも片付いたようで皆休んでいた。


「シエラさん!アレン様!ご無事ですか!?」


 リリエラさんが駆けつけてきた。


「ええ、これはちょっと目が回っただけです……」

「遠巻きに見ておりましたけど、あの数のケルベロスをたった一撃で仕留めるなんて……流石は大聖女さまのお弟子さんですね!」

「いえ……。それより怪我人は?」

「は、はい。こちらにまとめてあります」


 エルーちゃんに案内され僕はハイエリアヒールを唱える。


「よく頑張りましたね。貴女達の勇敢さのお陰で、皆様が無事でした。傷は残らないようにいたしましたから、確認してくださいね」

「シエラ様……!ありがとう……ございます……」




「しかし、おかしいですね……。こんなにケルベロスが群れるなんて……」


 アレンさんはそう言う。


「確かにそうですね……。この間のクラッシュボアの群れといい、この辺りに何かあるんでしょうか?」




 そんな話をしていると、遠くから馬車の走る音が聞こえてきた。




 なんだか凄く装飾の主張が激しい馬車だ。


「あ、あれは……まさか……」

「アレンさん、知り合いですか?」


「え、ええ……。あの馬車の紋章……セイクラッド王家のものです」

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