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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第732話 後宮

「こ、後宮って……」

「ソラ様はご婚約者が多いですし、ソラ様も婚約を解消するお気持ちはないと伺っております。ですから今のように婚約者同士が離れて暮らしていると不便ではないでしょうか?」


 つ、つまり……そういうこと(えっちなこと)をするための僕たちの居住区ということだよね……?


「後宮を新しく立てるのですか?」

「いいえ。実は使われていないものが既にあるのです」

「あ……もしかして梓お姉ちゃんの……?」

「左様でごさいます。複数の夫をお持ちになられた聖女様は複数人いらっしゃいますが、最後に聖女院におられたのは梓様です。ですから、そこを改装する費用に充てるというのはいかがでしょうか?」

「問題ないです」


 僕、どんどん梓お姉ちゃんと同じ道を歩んでいる気がするんだけど、大丈夫かな……。


「しかし後宮にはシャワー室はございますが現在浴場はございません。ですから、後宮専用の浴場をお作りになられるのはいかがでしょうか?」

「いいですね!」


 今まで風呂場に他人がやってくる度にどちらの性別の人が入ってきたかビクビクと怯えていたけど、それがなくなるようになるなんて……!


「……というか、いい加減聖女院の風呂場の方も、男女分けませんか……?私が全額出しますから……」

「そうですね。聖女様が増えてきて使用人の数も増えたので、通常の浴場も男女と混浴、聖女様用で四つに分けましょう」


 ああ、聖女用と混浴の配慮は僕のせいか……。

 聖女と名乗っている以上僕が男風呂に堂々と入ったらトラブルの原因になるし、僕が聖女用を使ったとしても他に使っている聖女がいた時に聖女間トラブルになってしまう。


「ありがとうございます。それで、どれくらい減りますか?」

「改装、それに最高品質の家具を取り揃えたとして、後宮専用のシェフやメイド、その他管理者を雇う金額で、二年前の分の約二割でしょうか?」


 へ、減らない……。

 割合で説明されているけど、僕がこの世界に来た一年目と比べると二年目、三年目は加速度的に聖女資本金が増えているので、二年前の二割では食パン十斤のうちの一斤を六枚に切ってから、その一枚を二口齧った程度の金額だ。


 いや、それだけでも一番大きい貨幣通貨である聖貨が動くほどのバカでかい金額なんだけど、使用しないといけない額を考えると、はした金になってしまうのが恐ろしいところだ。

 なんというか……感覚が麻痺してる。


「ほ、他には何かあるんですか……?」


 自分の浪費を他人に頼るってのが既に意味が分からないけれど、使わないと民が困ると言われては……もうなりふり構ってもいられない。


「勿論です。まずはセイクラッド王城への補填ですね。これはソラ様もそうなさるおつもりだったのでしょう?」

「う……バレてましたか」

「ソラ様、威圧的な体を装いながらも、わざと王城を破壊していたでしょう?」


 王城に侵入するためなら別にあんなきらびやかな装飾したパーティー会場への大扉を粉々にしなくても良かったし、城内すべての窓ガラスを割る必要もなかったし、バフォメットを倒すのにも王城の天井を消し炭にする必要もなかった。


 聖女は過失をしても誰も裁けない。

 それでも、わざと僕の過失にすることで、修繕の費用をこちらで賄うことに対しては他国に「政治利用」と言わせない言い訳とすることができる。


「セイクラッドは王妃・王女一派の貴族の悪事が露見して再構成の真っ最中。王政は止まり衣服の流通も王妃派の貴族が独占していたようですし、漁業再開の見込みがつくまでは民の職がほとんどなくなってしまいます。ですから、王城の修繕である程度の受け皿を作るおつもりだったのでしょう?」

「……感服いたしました」


 ルークさんにはもうなにも隠せないな……。

 お金だけはこちらで用意すれば、貴族組織の復興までの間の職に困った人達に仕事を与えることができる。


「感服したのはこちらの方ですよ。王家の悪事を暴きつつ、きちんと後の事を考えていらっしゃるのですから」

「まあ、その修繕費用も、今抱えている聖女資本金からするとはした金なんですけれどもね……」


 今度は一割もいかなかったよ……。

 減らないことに悲しむなんて、本当に贅沢な悩みなんだけどね。


「実は先日のソラ様の一件で、五国各国はどの国もソラ様に大恩があることになりました。各国から毎年のようにお布施や特産品の納品以外での御礼をしたい旨のお手紙をいただくのですが、特定の国から来た要望だけを受けてしまうと、政治利用とも捉えられかねられず、今までお見送りしておりました」


 確かにそういう話は聞いている……というかとくにお礼とかいらなかったから、ルークさんに断る理由を一緒に考えてもらった結果、そうなっただけだ。


「ですが五国ともから要望が来た今、全てに要望を出せば角が立たない状況となりました。まさに、今が好機なのです……!」

「いや、好機って言われても……。そもそも、各国からのお礼じゃあ、結局こっちがまたもらう羽目になるじゃないですか!」


 今必要なのは僕の聖女資本金の使い道。

 せめてもらう方じゃなくて、こっちからあげる方じゃないと、何の解決にもなってない。


「いいえ、それを活用したアイデアを考えたという話です。貰うのはお金やモノではなく、『権利』を貰えば良いのです」

「『権利』……ですか?」


 ちょっと話が見えてこない。


「広大な土地の所有権を国から貰うのです。そこで何をしても、何を建てても許される場所を各国から用意していただきます」

「でも、土地を貰っても……そこで何をすればいいんでしょう?」

「ソラ様、そちらに別荘を建ててはいかがでしょうか?」

「べ、別荘……ですか?」

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