閑話195 同人誌
【下野皐視点】
「サツキ様はお疲れのようですから、後日またお尋ねいたします。シルク様、サツキ様をお部屋にご案内を」
「畏まりました」
なんかすごい豪華なお食事に、温泉まで用意されているなんて……。
「なんかいい匂いするし、凄いわここ……」
「失礼します」
「は……え……シルク君!?」
腰にタオルだけを巻いた、ちょっぴり鍛えられた筋肉。
でもまだ幼さがどこか残る体躯。
ああ、この体、きゅんきゅんしちゃう……!
「どうしてここに……」
「お背中、お流しいたします」
「ちょっ、駄目よ!まだ15の男の子がそんなことしちゃ!」
「こちらの世界では許されていることでございます。それに、サツキ様は私のような若い男がお好きなのでは?」
「そ、そうだけど……あなたからしたら私なんてオバサンみたいな年でしょう?」
「いえ、流石にお姉さんくらいかと思いますが……」
「調子いいことばかり言うんだから……。いいわ、あなたも仕事みたいだし。でも背中だけよ。前はいいから」
前までやってもらったら、もうソープと同じになってしまう。
というか、絶対私が耐えられない……!
体と髪を洗い、二人でお湯に浸かる。
「ねぇ、シルク君はソラきゅんのことが好きなんでしょ?」
「はい」
「じゃあなんで私なんかのお世話してるの?」
「……それまで私はソラ様のことを女性だと信じておりました。ですからたまたまソラ様に拾われて愛情をいただいているうちに、いつしかお慕いするようになりました。ですが、ちょうどソラ様と一緒にこうして温泉に浸かっている時に、ソラ様本人から言われたんです」
なんと、そのような息子の薔薇園が……。
「『僕は君と同じ男だから、だから答えられない。でも、家族であり、男友達になることはできる』と。今やソラ様が女性愛者であることは、周知の事実ですから……」
「そ、そんなことが……」
「『でも聖女院には僕と年の近い男の子がほとんどいないから、シル君みたいな人がいて、助かっていると』。ですからこの恋は一つの叶わぬ初恋だった。それでいいと思ったんです」
「……そっか」
現実は甘くなく、薔薇も滅多に咲くものではない。
たとえ女の子以上に女の子している可愛い男の子と、男の子が居たとしても、双方の合意がなければ現実はお付き合いにならない。
「でも、ちょっと羨ましいな……」
「羨ましい、ですか?」
「私はいやらしく胸を見られるばかりでさ、好きな人も出来なかったから、初恋というものもろくになかったもの。二次元とか漁って生きてきたし、仕事とそれで一生を終えるくらいの意気込みでいたから、そうやって青春してるのは素直に羨ましいなって」
「……」
私は、遠くの景色を眺めているシルク君を思わず胸に抱き寄せた。
「シルク君の将来はまだまだこれからなんだから、焦らなくていいんだよ」
「……サツキ様。私は別に男性愛者というわけではないので、そのようなことをされると……」
「わ、わああっ!?ごめんねぇっ!!」
わ、顔真っ赤で可愛いっ!?
って違う!イエスショタ、ノータッチでしょうがああ私ぃっ!?
「……あのさ、シルク君、今もまだソラ様のこと好き?」
「……はい。でも、私はきっと、ソラ様のあの『女性らしさ』に惚れたのだと思います。それに、初恋は叶わないものだとも聞きますから……」
「ならさ、それを創作で晴らすのも手だよ」
「創作……で、ございますか?」
「そ!創作ならシルク君とソラきゅんが相思相愛でも、好きなことも、してもらいたいことも、なんでもできるでしょ?」
「ですが、そんなものを見られでもしたら……」
「見られなきゃいーのよ!頭のなかで考えるだけでもいいんだし。そうだわ!おねーさんが、創作の楽しさを教えてあげる!」
これでも同人イベントに出すくらいには小説書いていたんだから!




