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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第718話 眷属

「んんっ……」


 真っ白な空間から目を覚ますと、天井も白かった。

 医務室と思わしきベッドにはエルーちゃんが手を握りしめて眠っており、涼花さんは近くに椅子をおいて座り、イルカのぬいぐるみさんを片手にこくりこくりと眠っていた。

 ああ、心配してくれたんだという嬉しさと、生きていてよかったという安堵感を得て、思わず愛しいエルーちゃんの髪を点滴の射された左腕で撫でていた。


「そあはま……」


 きっと眠っている間の僕が悪夢にうなされないように、ずっと手を握ってくれていたんだろう。

 寝ぼけている姿を見て、愛おしさに元気を貰っていたところ、エルーちゃんの寝ぼけ声で先に涼花さんが起きてしまった。


「おはよう、ソラ様。君が無事で本当によかった」

「涼花さんがいたお陰です。私こそみんなを守れて、本当に良かった……」


 相変わらず宝石のように綺麗な涙を流す彼女に笑ってほしくて、僕はにっこりと感謝の言葉を伝えた。


「んん……そあ様?」

「おはよう、エルーちゃん」

「そ、ソラ様ああああぁん!ばかばかばかぁっ!」

「ごめんね、心配かけて」


 僕、婚約者を泣かせてばっかりだな。


 やがて僕が起きたことを察知して、ハープちゃんとシルヴィアさんが来た。


「主ぃーー!」

「そういえば耳も脳も体も治してくれたんだね」

「当たり前だ!我には、それしかできなかったんだからな……」

「ドロップ品は回収して、割れた海ももとに戻しました。これで漁業も再開できることでしょう」

「連日クラーケンの競売でギルドも盛り上がっているようですよ」

「みんな、ありがとう。あとでギルドにも行かなきゃね」

「まだ安静ですっ!」

「わかった、わかったから!」

「それより先に、果たすべきことがあるだろう?」

「うっ……でもこんな格好悪いタイミングでいいの?」

「ソラ様に格好よさは求めていないと思いますよ」


 エルーちゃん、それは傷をえぐるからやめて……。

 ああ、僕もスフィンクスみたいなのと眷属憑依すれば、理想のダンディな声にハンサムで鍛え上げられた格好いい男になれるのにな……。


「主は、趣味悪いぞ」

「あんな筋肉達磨に犯されたくはないです……」

「二人とも心読まないでくださいよ……」


 そういえば、他の男性神獣に憑依してキスとかしてしまったら、間男みたいなことになっちゃうのか。

 というかその発想するシルヴィアさんがちょっと怖いよ。


「ふふ、眷属憑依で女性になったソラ様に、女の気持ちよさを教えるの、楽しみです……」

「ふたなりにもなるなんだから、両方責めという楽しみ方も出来るな……」

「ちょっ、せめて点滴外れるまではナシですからね!」


 婚約者二人はなんて怖いこと考えるんだっ!


「それより……ええと!」


 こんな医務室で格好なんてつかないけれど、せめてびしっと姿勢をただしてから眷属の二人に話しかけた。


「ハープちゃんと、シルヴィアさん。私の婚約者になってくださいますか?」

「もちろんだ!」

「私も、よろしいのですか?言ってしまえば、私は1万年以上の生き遅れの喪女なのですよ」

「こんな可憐な人が喪女な訳ないでしょう。それに、生き遅れたのはシルヴィアさんのせいじゃなくてエリス様のせいです!だからエリス様には、帰ってきたら一緒に文句言ってやりましょうね!」

「ありがとう……ございます……!」


 僕は言いたいことを言い終えると、また眠気に負けて寝てしまった。

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