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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第717話 骸化

「ごぼっ……」

「ソラ様ッ!?」

「ぷっ……大丈夫……油断しただけ」


 血を吐いたのは久しぶりだ。

 それも、他人を守るためではなく、不意を突かれて攻撃されたことも。

 でも、それだけ予想外のことが起きていた。

 まるでゴーレムが岩を組み立てて自分の体を作りあげるように、切られた尻尾同士が継ぎ接ぎになって動いたのだ。


「……ハイヒール!」


 血を吐き出した後、自分に回復をかける。


「捌かれた魚や海老が動くなんて話はあるが、その類いか?」

「いや、それなら継ぎ接ぎの尻尾が連動して動くのはおかしいです」

「海の底、その地面の下に潜んでいたようですね、ヤツが……」

「まさか……!?」


 不死王リッチが地面からわんさかと姿を現す。


「まさかヤツは、魔石を吸収するのではなく、その逆をしようとしているのか!?」

「そうか!?ま、まずいっ!?ハープちゃん、眷属憑依!」


 大量のリッチは死体となった海龍リヴァイアサンのバラバラの体にそれぞれ入り込むと、組み立てて元のリヴァイアサンの形に戻ろうとするが、そこには最早肉体はあらず、所々から骨が見えていた。


 これは、海龍が骸化した姿。

 つまるところ、海龍とリッチが合体してできた、ドラゴンゾンビというべき存在だった。


「『――煌めく白銀の星空よ、今我(うけたまわ)りし祝福が悪逆非道を妨げる大楯となれ――』」


「「ギシャアアアアァァアアァア!!」」


「『――星の盾(ルミナ・アイギス)!――』」


 リッチなら神獣と同じレベル90だから、レベル100である僕たちには即死は効かないが、ドラゴンゾンビともなれば海龍のステータスで即死を放つため、100でも即死になる可能性が高い。

 銀河の輝きを放つ大盾で闇魔法である即死咆哮をどうにかして相殺すると、追撃を防ぐために手を合わせる!


「『くっ……今のうちに、全員我のところに集まれ!』」

「はいっ!」

「『――崇高なる覇王の逆鱗よ、今我(うけたまわ)りし祝福が賊子を蹂躙せし紫電の驟雨(しゅうう)となれ――――叛逆の炸裂閃弾バースト・オブ・リベリオン――』」


 流星群のごとき光の雨を降らせて時間を稼いでいる間に、涼花さん、シルヴィアさん、エルーちゃん、そしてティスと玄武が集まってくる。


「『我に魔力を注げ!いくぞ!』」

「はいっ!」

「ああ!」


 相手は100体以上のリッチと海龍リヴァイアサンが合体した化け物。

 逆に言えば、リッチ達がドラゴンゾンビとして固まってくれている今こそ、叩くチャンスともいえる。


 リッチは光属性に弱いことは分かりきっているものの、海龍と合体している上に100体もいる今、並大抵の魔法などでは倒せないことくらいは分かる。


 久々に火力重視の倍率が乗る魔法武器『大精霊の大杖』と『ダイヤモンドのネックレス』を取り出し、知力ステータス2149に更に火力バフを乗せる。

 全員が僕の肩に手を置き、オーバーフローした魔力を全て杖から魔法陣にどんどん費やしていく。


「『――現世の万物を覆滅せし神よ、今我承りし祝福が全てを無に帰す導となれッ!!――』」


 魔法陣は海全域を包むように、そして演算して海の生き物には手を出さないよう慎重に魔法陣を完成させていく。


「『――ホーリー・デリートッ!!!!――』」


 演算に脳が焼け、鼻血まで出て、出入りの激しい魔力によって身体が引きちぎられそうな感覚をギリギリまで保って、それを杖へと放出していく。


「―――――――――」


 白い光は初め細長い円柱だったものが加速度的に円の半径を長くしていき、そして塞き止めていた氷も全て、何の音もなく消し飛ばした。


 僕はその真っ白な光景に眩しさを覚えながら、大杖を手放した。

 やがて消えていく光の儚さに見とれながら、海龍とリッチのドロップ品が落ちたのを確認し、僕は安堵と同時に自分の体を支えていた大杖を失って、前にどさりと倒れた。


「―――!」


 何を言っているかは分かったけれど、もう耳もやられていて詳しくは聞こえていなかった。

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