表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第9章 同甘共苦
91/1274

閑話19 投資家

【ライラ・クロース視点】

 休日。

 今日は叔母様が帰って来ていた。


「久しぶりね、ライラちゃん」

「お久しぶりです、学園長」

「流石に学園の外で学園長と呼ぶのはやめて頂戴……」

「冗談です、叔母様」

「相変わらず本の事以外は無表情ね」


 余計なお世話だ。

 私はただ書に触れていたいだけ。


「そういえば、演劇見ましたよ。貴女の語り部、見事なものでした」

「ありがとうございます。ですが、優秀な後輩たちのお陰です」


 シェリルの脚本がなければ上手く行ってなかった。

 それに……


「そうですね。とくにシエラさんの演技力には驚かされたわ……」


 私もこくりと頷く。


「きっとあの子は、才能を妬まれていじめられるようになったのでしょう」

「あら?ライラちゃんもその話、聞いていたのね」

「ええ、演劇がいじめられた原因になったとだけ」


 あれだけの才能があれば、妬まれるのは仕方ない。

 だがそういう才能の芽の潰し方は、私は大嫌いだ。

 私は他人の才能の芽を開く側の人でありたい。


「シエラさんのことは、私の代わりに見守ってくれると助かるわ」

「はい」


「そういえばシエラさんで思い出しましたが、今度ソラ様とお茶会の席を設けることになりましたから、よろしくお願いね」

「……」

()()()()()()()()()()()()()?」

「……はい」


 やはり隠し事はするものじゃない。


「大丈夫よ、ソラ様は頑張っている子には優しい方だから」


 最近会長も叔母様も、何かとソラ様の話をしたがる。

 それだけ魅力的な人だということなのだろう。


 私は聖女祭で驚かすという最悪な出会い方をしてしまったから、既に幸先が悪すぎる。

 いつ来るかわからないイベントに想いを馳せつつ、私は()()()の来るのを待っていた。




 昼を過ぎて叔母様は何処かへ行くと、待っていた後輩がやってきた。


「いらっしゃい、シェリル」

「お、お邪魔いたします……」


 この萎縮している後輩こそが、私の見つけた()だ。




 客間へ案内すると早速本題に入る。


「例のものは?」

「は、はい……こちらに……」


 端から見ると闇取引のようだが、シェリルが取り出したのは原稿用紙。


「では、読ませて貰うわ――」




 半刻後、私は原稿用紙を(ととの)えた。


「素晴らしいわ!劇の脚本もとても良かったけど、貴女にはやはり百合小説(こちら)の方が合いそうね」

「あ、ありがとうございます!」

「私、続きが気になって仕方ないもの。私のために書いてくれたお礼に、是非これを受け取って貰えるかしら?」


 私は用意していた契約書類を出す。


「え……そ、そんな……」

「私は才能ある物書きに出資して花開かせるような、新しいレーベルの形を作りたいと思っているの。だからその夢の第一歩として、あなたと出資契約を結ぶわ。貴女が書いた本が有名になることが私の……いや私達の第一歩よ」


「で、ですが……流石にソラ様にご許可をいただきたいです……」


「確かに主人公は『大聖女さま』としているけど、実名が出ているわけではないから許されると思うわよ。でもそうね……貴女が気に病んで続きが書けなくなるのは困るから、今度聞いてみて貰えるかしら?」

「は、はい!」

「私からも今度、お願いをしてみるから」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ