第714話 化物
海の真ん中に移動して、足場を魔法で用意する。
「海の生き物には悪いことをしてしまいますから、ティス、あなたの歌声でこの海域を避けるように伝えてくれませんか?」
「分かったわ!『人魚の口ずさみ』」
「ハープちゃん、眷属憑依!」
まずは眷属憑依でハープちゃんと合体しておく。
聖獣テティスの魚類避難勧告が終わるまで時間があるので、改めて教皇龍と合体した自分の体を見てみる。
「『ん?背が伸びてる……!』」
エルーちゃんより1センチ小さかったのに、今は明らかに僕の方が背が高い。
「奥方様、眷属憑依中は両者が蓄積した肉体や筋肉が引き継がれます」
確かに男の僕にないこの胸がふっくらとしているのも、よく見るとハープちゃんが人化した時の胸にそっくりだ。
つまり、僕は前世で憧れだった筋骨隆々のダンディーマンにはなれないものの、龍の羽と鱗が生えたホワイトブロンドの美少女お姉さんになれたり、天使の羽と環がついたお胸が大きくお尻の引き締まったセクシーな金髪の大人の女性にはなれるってこと……!?
「『主、褒めすぎだ……照れるぞ』」
「お、奥方様……!どうかその辺で……!」
あ、そっか。
眷属には心の声が聞こえるんだっけ……。
「シルヴィア様!それってもしかして、お胸も女性器も引き継いでいると……!?」
「『えっ、嘘ッ……!?ちょっ、主、触っちゃ……!?あ、ある……!?えっ?り、両方あるぞ!?』」
引き継ぐって、元々の僕の体もありつつ引き継ぐってことなの!?
え、じゃあ眷属憑依しているときの僕って、正真正銘のふたなりなの……!?
「ソラ様、このことについてはお帰りになられましたら、詳しくお話しましょうね……?」
「私としては、小さいソラ様の方が可愛くて疼くが……。ソラ様に女の快楽を教えられるのか……それはアリだな」
「『……』」
ああ、えっち魔人達がやる気に満ちてしまった……。
そんなことはさておきなんですよ。
さっきティファニー第四妃に魔水晶を触らせた時、持っていた僕のステータスもうっかり覗いてしまったわけなんですよ。
名前:奏天
種族:人種族 性別:女
ジョブ:聖女 LV.190/100(+90)
体力:1599/999(+600)魔力:1599/999(+600)
攻撃:999(+1200)
防御:999(+300)
知力:999(+1200)
魔防:999(+300)
器用:999(+300)
俊敏:999(+300)
スキル
光属性魔法[神]、無属性魔法[極]
加護
女神エリスの加護
状態
眷属憑依(教皇龍)
攻撃と魔法両刀特化のハープちゃんのステータスが、見事に足されてる……。
物理も魔法も2000越えって、もう化物じゃんか……。
しかも光属性魔法[神]ってなんだ?
極同士が合わさったからかな?
「『まあいい。作戦開始だ』」
杖いらずで詠唱を始められるのは大きすぎる。
それにこの化物ステータスなら、超広範囲に最上級魔法を放っても、全然頭がいたくもならない。
「『――現世の万物を覆滅せし神よ、今我承りし祝福が全てを無に帰す導となれ――』」
範囲は極大、海龍を含むおよそ10キロメートルはある海域全ての水を円柱形に一気にくり貫く。
ついでに海龍に特大ダメージをお見舞いしてやれば良い。
「『――ホーリー・デリート――』」
天に昇る光の円柱の中のものは、いとも無慈悲に全てを消し、地面だけが残った。




