表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第1章 天孫降臨
9/1242

閑話1 ガチ恋

柚季(ゆうき)(さくら)視点】

「…………ほら行ったわよ。……そろそろ出てきなさい」


 本当はどうせここにいるんだろうなと思っていた。


「くぅ…………尊い……。……ここにソラきゅんがさっきまでいたなんて……」


 空間が裂け、白の長髪にファンタジーのエルフのような、少しだけとがった耳が姿を現した。


 見た目は20代後半から30代くらいにしか見えないこのお姉さんこそが、唯一神エリス。


「同じ空気吸ってるんだ、私…………ん゛ん゛ん゛ぅ!」


 そう。ソファで限界化して悶えているこのエリスはソラちゃん推しのオタクだ――




 エリスはたまに地球観察と称して友人候補を探していることがある。その最中に偶然元の世界でソラちゃんを見つけたらしい。

 女装姿もツボ、男の子の姿もきゅんきゅんするらしく、一粒で二倍美味しいというのが本人談。


 前世でいじめられるソラちゃんをなんとかしてあげたくて、勇気を振り絞って、初めて男の子にゲームを渡したらしい。


「あなた、今回の件で相当嫌われたみたいよ?大丈夫なの?」


「わっ、私は……壁になれればそれでいいのっ!それ以上なんて……」


「じゃあ、別に女装してもらう必要もなかったわよね?」


 ソラちゃんが聖女学園に通うことは聖女としてのしきたりみたいなものだけど、エリスが言い出さなければ、女装を強要する必要はなかったのだ。


「それは……だって……」


 恥ずかしいのか、顔を隠す仕草は最早ただの乙女。


「男装しちゃうと……ソラきゅん……きっと皆にモテちゃうだろうし……」


 これは重症ね……。これで「私は恋してない!壁から見ているだけでいいから!」だなんて言い張るんだから、可笑しな話よね……。


「それを恋って()うのよ。まったく……。ソラちゃんのことになると、途端に"らしく"なくなるんだから……」


 神エリスが初めて恋した聖女。

 それがソラちゃんに聞き及ぶことは禁止されているが、その事実は神託のときにアモルトエリスの世界の民に共有されている。

 神エリスの友人である存在のことを聖女と呼ぶのなら、エリスが見初めた存在のことはなんと呼ぶのか。

 アモルトエリスの民は考えた結果、ソラちゃんのことを『大聖女』と呼ぶことにしたらしい。

 そうしてソラちゃんが来る前から、彼は『大聖女ソラ様』と呼ばれるようになった。


「さっ、サクラぁ……どどどどうしよおぉぉう!!、ソラきゅん、怒らせちゃったぁ……」


 友人のエリスがこんな風に感情豊かになったのも、ソラちゃんのことを話すようになってからだった。そういう意味ではソラちゃんには感謝している。その間を取り持っている身としては胃が痛いけどね……。


「条件、訊いてたでしょう?ちゃんと自分から会って謝れば赦してくれるわよ」


 ソラちゃんはしっかりした子だった。前世でのソラちゃんのことは逐一報告してくるエリスから訊いていたけれど、あの両親、あの家族にいてあんなしっかりした子になるんだなと思ってしまったくらい。


「あ、会えないよぉ……一体どんな顔して会えばいいのぉ……初めてのイチ推しなんだもん……」


 まるでガチ恋厄介オタクね……。先行きが心配になるわ。


「取り決めよ。3ヶ月以内に会わないなら私が無理矢理会わせるからね」


「そんなご無体なっ!?」


「それに、早く会って説明しないと今回みたいな他の人への被害が増えるわ。ソラちゃんは優しいから他人のためには怒るわよ」


 この世界に来てから、私は充実した毎日を過ごしている。正直エリスには感謝している。その恩返しに、この友人の初恋を応援したい気持ちはある。


「さて、どうしたものかしらね……」


 相変わらずソファーで悶える友人(エリス)を横目に、不安にまみれた先行きについて考えることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ