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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第708話 制裁

「エドナ!無事だったか!」

「アール殿下!はい、ソラ様のお陰でなんとか……」

「お前が無事で、本当に良かった……。我は絶対にお前が父上に毒を盛ったなどとは信じていなかったからな!」

「ええ、私も信じておりました……」

「ええと、そちらの女性は?」

「お初にお目にかかります、大聖女様。アール殿下の第五妃、イヴと申します」

「ああ、さっき話題になっていた、子爵令嬢の……」


 今さらだけど五妃って、奥さん多すぎでは……?

 いや、今の僕が言えたもんじゃないか……。


「まあ、ご存じでしたなんて!まだまだ未熟者ではございますが、光魔法使いとして崇敬しております」


 純正な光魔法使いが、セイクラッドにもいたんだね。

 って、なんかこの子凄い手を触ってくるな……。


「すまない、イヴは神殿で働いていたから、聖女様を特別に神聖視しているようでな……」

「あ、ああ……そうなんですね」


 神殿とは、魔法で回復を行う治療院のようなところでもあり、聖女や女神を崇め、光魔法使いが集う所だ。

 病院が外科手術や薬を配布して治療するのに対し、神殿は回復魔法やポーションで治療する。

 自己紹介が済んだところで、ひと息つく。


「ソラ様、お怒りはお鎮まりになりましたか?」

「ごめんなさい、迷惑をかけて。でも中継は続けてください。私はまだ全貌を話しきっていませんから」

「そうなのですか?」

「ええ。正直婚約者に手を掛けられたことも怒ってはおりますが、それ以上にアリシア=セイクラッドが行った非道がもう一つあるのです」

「もう一つ……我が娘は、いったい何を……?」

「三つ目の罪の話をする前に、ハイデン=セイクラッド王、二年前にあなたと取り交わした約束を覚えていますか?」

「え、ええ。しかし、我々はそれを破ってしまいました……」

「ち、父上!だがそれは『我が王家から迫害されるようなことが再び起こるようなら、姉上が我を奪ってしまう』というものではなかったか?それであれば、今回のものは父上も被害者だし……」

「いや、アール、お前にも話していなかったが、大聖女様はお前の境遇を更に深く理解していらしたのだ。だから聖女院から来た正式な書面には、もっと細かい内容が記されていた」


 二年前、僕が聖国に帰国してからルークさんが「口約束だと緩い」と怒られてしまい、誓約書を作った。

 ハイデン王との協議のうえ、誓約書の内容を少し変えてもらっていたのだ。


「アール=セイクラッド。あなたの母親はセルマ=セイクラッド王妃ではありませんね?」

「ど、どうしてそれを……!?」

「私も、家族から迫害を受けていた理由は同じでしたから、顔を見ていれば分かるんですよ。あれは()()()()()()()()から出てくる、嫉妬による憎しみから出るものだって……。まあ血縁関係は今のあなたの場合とは真逆でしたけどね……」


 アール王太子の母親はもういない、前王妃。

 アリシア王女こそ、セルマ王妃とハイデン王との実子だった。


「だからこそアリシア王女は若い頃から頭がいいと持て囃す貴族があとをたえなかった。ですが実際にはアリシア王女はそこそこ賢いものの、天才というほどでもないと聞いています。でもそれは現王妃であるセルマ王妃が貴族を味方に付け、言いふらしていたからに過ぎませんでした」

「だが、当時の噂はこうだったはずだ。『バカ王子に比べて、アリシアは賢い』。我が言う立場ではないかもしれないが、当時の我は学校のテストも含め自他ともに認めるバカだったぞ」

「その噂を初めて聞いた時に、私は嫌な予感がしたんです。これは後で影を使って裏取りをしてもらいましたが、私の嫌な予感はほとんど当たっていました。忙しいハイデン王に代わり二人の兄妹の家庭教師を選定していたのは、セルマ王妃だったんです」

「なんだって……!?」

「では、アール王子がバカと言われていたのは……」

「ええ。わざとろくでもない家庭教師を雇い、意味のない授業をさせ、意図的に頭を悪くさせていたのです」

「そ、そうだったのか……」

「アリシア王女もまたセルマ王妃の被害者かもしれませんが、彼女は王妃が『お前が女王になるべき』だと散々言われてきたのでしょう。だから二人でお茶会を通じてあらゆる貴族令嬢相手に、アール王子はバカで婚約者相手に間抜けな顔をするどうしようもない王子と吹聴していたのです」

「くそ、我がもっと賢ければ……」


 当時の王子の部屋は今でも覚えているけど、本が一冊も置いてなかった。

 賢くなる手段を全て絶たれて、その上家庭教師にまで見当違いなことを教えられて、それで賢くなれと言うのは到底無理な話だ。


「そんな状況から、私はあの二年前、無理矢理アール王子の境遇改善を王家相手に求めました。だけど虐待していたのは王だけでなく、王妃と王女もだった。でもあの二人は全て王の責任にして、ちっとも反省していませんでしたよ。私が二年前セイクラッド王城にいる間、ずっとあの二人には睨まれ続けていましたからね」

「ソラ様相手に、なんてことを……」


 意図的に情報を仕入れさせなければ、政治に関与することもできなくなる。

 とんちんかんなことを言っていたアール王子がここまでまともになったのは、少なくとも二年前から進歩があったということだろう。


「このままいくと、前世の私の家族のように、アール王子がつまはじきにされてしまう。ですから私とルークさんとハイデン王で話し合い、誓約書を書き換えたのです。『王妃と王女とアール王子の関係が変わらないようであれば、この国と王族に制裁を加える』と」

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