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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第707話 失禁

「ソラ様、教皇龍(ハープストドラゴン)様。もうお止めください!」


 エルーちゃんが、僕に抱きついていたことに気付いた。

 僕の心がおかしくならないように、魔力暴走が起きないよう必死に押さえつけてくれていたんだ。

 自らが一番その威圧や魔法に傷付いたというのに、僕はなんでこんなことをしていたんだ……。


「これ以上その威圧を放たずとも、ここにいる民や貴族の皆様は国が犯した過ちに気付き、ソラ様のお言葉に耳を傾けてくださるでしょう」

「『エルー、やめろ!今の我に触れるな!鱗で怪我をする!お前が傷付くのは見たくない……!』」

「私は大丈夫でございます。私にはソラ様への愛がございますから……」

「『……ハープ』……ちゃん、もういいよ。あとは一人でできるから」

「良かった、お義母様……もとに戻って……」

「エルーちゃん、今回復するから。ごめん、ごめんね……!」

「気にしないでください。これでもソラ様に鍛えられていますから、へっちゃらですっ!」


 姉の血に染まってしまったというのは、僕の勘違いだった。

 でも婚約者に魅了魔法をかけられかけて怒りに狂ったのは事実だし、それにあの公開処刑のように相手を貶めるやり方自体は姉そのものだった。

 だから、姉と同じ血を引いてしまっていて、その血が怒りというトリガーで疼いてしまったというのは間違いではないだろう。


「話の続きをする前に、ティファニー妃の魅了を解きましょう。エルーちゃん、お願い」

「ソラ様は、本当にもう大丈夫ですか?」


 抱きつくエルーちゃんの上目遣いが可愛いと思えているから、きっともう大丈夫だろう。


「うん。もう平気だよ。でもティファニー妃は長い間操られていたから、きっと心が壊れてしまうかもしれない。だからエルーちゃんが、抱き締めてあげて」

「分かりました」


 エルーちゃんが拘束されたティファニー妃の手を握るのを合図に、解除魔法をかけると、ぐったりと横になった。


 エルーちゃんがそのままティファニー妃を抱えたとき、僕は椅子を人数分用意して、皆さんを座らせた。


 特にハイデン王は長い間毒に侵されていたらしく、ここに来るまででも真っ青になっていたので、座らせて回復魔法をかけた。


 アリシア王女は既に親衛隊によって魔封じの首枷をはめられているため、もう魔法は使えない。


「ソラ様、落ち着いた今言うことではないかもしれないが、後ろにいた王侯貴族が失神だけでなく、失禁してしまっていてな……。物凄い惨状なのだが……」

「あっ……」


 僕の威圧、そんなやばかったのか……。


「すみません、解放はできませんが綺麗にはしますから……エリアクリーン!」


 確かに今すごい臭いしてたな、今まで気付かなかった。


「ってあれ?どうしてこんなところに……」

「じ、師匠(じじょぉ)っ~~!ごろざないでぇぇぇ~~!」

「サンドラ第二女王!?パーティーに来てたんですか!?」

「ぐずっ、ごの間誕生日のごど謝るがら、本当に許じでぇ~~!」


 ツンデレのサンドラさんが脇目もふらず号泣している姿なんて初めて見たよ。

 手が湿ってるし、本当に申し訳ないことをした。


「いや、それは本当に私の方が悪かったやつですから。サンドラさんはなにも悪くないのに巻き込んでしまって、本当にすみません……」

「ぐすっ、も、もう、おこらない?」


 流石に国賓を床で座らせているのは問題なので、もう一つ椅子を用意して座らせる。


「そもそもサンドラさんには怒ってませんから……。落ち着いたら帰っていいですからね。今度ハインリヒにもサンドラさんにも正式にお詫びします。本当にすみませんでした」


 流石にこれ以上迷惑をかけるわけにも行かないので、疑惑がないと確約できた人達から順に退出してもらった。


「なるほど、失禁するほどの威圧に耐えるための訓練……親衛隊のメニューに追加しよう」

「涼花さん、それって私を使って失禁防止訓練させようとしてます……?」

「今後ソラ様が変身した時も側で戦えないとまずいだろう?」


 それはそうかもしれないけれど、親衛隊のみんなが一斉に漏らす訓練なんて、ただのハラスメントでしかないと思うんだ……。

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