第700話 包囲
「セフィー、聖女院の政務官に通達を。その後私の命令で真桜ちゃんの親衛隊を全てに命令を」
「わかりました、お義母様」
「神流ちゃんは獏を使ってアール王子と捕らわれたエドナ妃の救出を」
「はっ!」
「しかし、案内されているのは三日後……どうやって王城の中に入りますか?」
「そうですね……では、正面突破しましょう」
「は……?」
王城前に並ぶは僕と親衛隊の皆さん総勢100名。
僕やエルーちゃんだけで一国を落とすくらいはわけないが、僕たちで育てた親衛隊は各員が神獣以上のステータスを持ったいるため、合わせれば五国くらいはゆうに落とせそうだ。
僕と涼花さんは改良版「魔蓄の指輪」を指に嵌められるだけ嵌める。
これで使える魔力の総合計は1万を突破する。
パーティということで、僕の戦闘着はドレスだ。
幸いここセイクラッドでドレス選びには困ることはなかった。
「何者だ!?」
「そなたたちこそ控えろ、大聖女ソラ様の御前である。『超重力』」
「「ぐっ、ぐぅっ……」」
「申し訳ありませんが、ここは通していただきます。これは聖女命令です」
門を抜けて魔法で入り口を吹き飛ばす。
どうせ結界を張るし、後で戻すつもりだから壊してもいいだろう。
『――大地を照らす神秘なる聖獣よ、今ひと度吾に力を貸し与えたまえ――――顕現せよ、聖獣ドリアード――』
捕縛をするだけなら地面から木を生やして縛り付けるだけでいい。
魔力の多い相手には縛り付けた木から魔力を吸い取れるので、拘束力でリアに勝るものはない。
「リア、屋敷の全メイド・執事・騎士を拘束して。各員、毒の仕入先を手に入れたら大通りに来ること。いいですか?」
「「イエッサー!」」
親衛隊の皆、僕が一緒に訓練メニューを考えているからか総督って呼ぶんだよね……。
まあ慕われていたおかげでこうして無茶振りしても乗ってくれるのは幸いだ。
「国際重罪人の捕縛を執り行うため、これよりパーティー会場の中に入るものを固く禁じる」
「一時的に魔法で拘束させていただきますが、少しでも動いたら同族と見なし罰が重くなりますので、全員動く時には覚悟してください」
各所にワープ陣を設置し、聖女院の聖影と親衛隊を総動員して人海戦術で情報収集を行う。
ワープ陣は各貴族家に繋がっており、そちらではケイリーさんや藤十郎さん達が拘束し情報収集を行っている。
「この先がパーティー会場ですね」
大扉の門番を拘束し扉をこっそり引くと、案の定鍵が掛かっていた。
敵ながら用意周到だ。
「ここで事が行われるまで誰も外から邪魔はさせない」、そんな確固たる意思を感じる。
「本日はアリシア王女の成人記念パーティーのようです」
「そういうことか……」
断罪の瞬間は三日後ではなく、今日だったのだ。
ほとぼりが収まるまでの間、僕を近づけさせない理由があった。
そして何故三日後なのかの説明もたった今ついてしまった。
けれど残念ながらこの程度、僕たちにとっては何の障害でもない。
「聖女相手には、詰めが甘過ぎますね。リカバー」
光魔法で解錠をして少し中を覗き見ると、まだパーティーは始まったばかりのようだ。
「忍ちゃん、中に潜入できる?」
「モ○チンです」
「動きがあったら教えて。あと次同じこと言ったらお仕置きね」
「お仕置き……私としては、モロのチンを私の中に潜入していただき、動きのある前後運動を教え込まれるようなお仕置きは、とても吝かではございませんよ……!」
「後で一発、全力でぶん殴るからね?」
あの子の耳、絶対僕が言った単語を繋ぎ合わせてえっちになるように置き換わるアナグラムフィルターでもついてるでしょ……。
最後の聞く前に逃げてるし、察知能力が高すぎる。
「各員、王家が話し始めるまで情報収集に徹してください!メイドは聖女院のメイドが代わりに入ってください。渡された患グラスと鑑定メガネで毒物を見つけたらすみやかに報告を!」
待つ時間が長くなればなるほど、僕たちが有利になるのは明らかなのに、目の前で何か悪いことが行われているかもしれないかと思うと、今すぐにでも会場内に入ってしまいたいと思ってしまう。
「大丈夫、ソラ様。少し落ち着いて」
僕の様子を見た涼花さんがぼふりと胸に抱き寄せてきた。
柔らかい胸の弾力が僕を包み込んでくれて、そこにうずくまるだけで何故か安心感を得られた。
まるで赤ちゃんが母親に抱かれて安心するかのような感じで、僕の鼓動がとくとくとくんと次第にゆっくりになっていく。
「君が傷ついているのを見たくはない」
「私は傷一つ付いていないですよ」
「違う。心の傷だ」
「……いいんですよ。これは私の性ですから。でも、また疲れたときは癒してください」
「ああ、勿論」
「総督、マイスリー公爵家からの証拠物を押収しました」
「ケイリーさん、ありがとうございます。今記憶するために全部映像魔法で記録します」
「ソラ様、そろそろ王家のお話が始まるようです」
大丈夫、今度こそ僕は間違えない。
「では、戦場に向かいましょう――」




