第690話 試着
ショッピングモールの中には普通はアクセサリーや服屋、文具にレストランなど多岐にわたるけれど、ここは服屋ばかりだ。
シックな服専門店、フリフリの服専門店、ぬいぐるみに着せる服専門店……は後で回ろう……じゃなくて、あと下着専門店など。
そのそれぞれに男性用専門店や女性用専門店、それにユニセックス専門店、更に獣人や竜人などの尻尾がある人たち用の専門店や小人族専門店などがあり、ここに来れば本当に欲しいものが何でもあると思ってしまう気さえする。
そして今僕がいるここは……女性用水着専門店。
「なんで私までここに……」
「おや、婚約者殿は一緒に水着選んでくれないのかい?」
「あとで下着専門店にも行きましょうね」
僕の性別を忘れている節もありそうだけれど、最早僕を興奮させるために狙って言ってるよね?
「ソラ様、こちらとこちら、どちらがお好みですか?」
こ、これは白のビキニに……こっちはスク水!?
「白はエルーちゃんによく合うと思う。でもいくらエルーちゃんでも、スク水は流石に犯罪臭が……」
「犯罪臭……?」
「え、えっちだから、ちょっと他の人には見せられないかな……」
「……!でしたら、両方買います!」
「エルーちゃん!?」
「こっちは、夜に着けますね……!」
「……清浄」
こんな夜のお誘い受けたら、流石に反応しちゃうってば。
「ソラ様、魔法でお鎮めになるのなら、私が致しましたのに……」
「いや、流石に外ではできないでしょ」
「試着室で……」
「そういうの、お店や店員さんに迷惑がかかるから絶対にやめようね!!」
この世界聖女に激甘だから、常識人が唐突にライン越えてくるの、本当に怖い。
「なるほど、ラインが見える水着が夜の好みなのか。では、こういうのは如何かな?」
試着室から姿を現した涼花さんは黒いスイムスーツを着ており、胸やお尻などのボディラインがスイムスーツ越しに凄いよくわかるようになっていた。
「まあ!」
「涼花様、素敵ですわ!」
「格好いい。私もそういうのにする。早く泳げそう」
「ありがとう、シェリー、ソーニャ君。ソラ様はどうだい?」
「……ダメダメダメダメっ!」
「ちょっと、ソラ様!?」
僕は涼花さんに似合いそうな藍色のビキニを手に取ると、涼花さんを試着室に押し戻してカーテンを閉めた。
「涼花さん、それはえっち過ぎます!せめてこれに着替えてください!」
「なるほど、つまり夜には最適だと。ところでそれ、鎮めた方がいいかい?」
「……!?!?!?涼花さんのえっち!」
ご褒美とかなんとか呟いている涼花さんから離れて五回くらい清浄をしてなんとか鎮め、その後試着室から先に出る。
「はぁ、散々な目に遭った……」
「あの……失礼ですが、お客様は大聖女様でしょうか?」
目をキラキラさせた店員さんがこちらを見ていた。
……嫌な予感しかしない。
「はい。そうですが……」
「まあ!水着をお選びなのですね!」
「いや、私は違……」
「こちらのビキニはお胸が少し大きく見えるタイプでして、とてもおすすめですよ!」
「ソラ様、こちらにしませんか!」
「いや、だから私はビキニは着ませんってばっっ!!」




