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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話183 蓄電器

【エレノア・フィストリア視点】

「エレノア、最近根を詰めすぎだぞ」

「なんだい急に、都合の良い時だけ母親面して」

「エレノアッ!?」

「お姉様、お疲れになられているとはいえ、言いすぎです!」

「陛下も心配ならそう仰ればよろしいのです。いつも回りくどいからこうして愛情が空回りしているのです」


 アイヴィとシンシアがボク達を宥める。


「シンシアまで酷いな……。エレノア、私は本当にお前を愛している」

「なんだ、急に……」

「愛してるからこそ、無理だけはしてほしくないんだ。家族を失うのは、兄と夫でもう沢山だ……」

「善処はするが……もう今の研究は終わりだよ」

「なら、休めるのだろう?」

「…………もう行く」

「待て!聖女院から結納式の招待状が来ている。必ず行くように!」

「はっ!ボクのこと、なんも分かってないくせに……」

「違う。分かってるからこそ行けと……エレノア!聞いてるのか!?」


 聞く気もない話を中断してダイニングを抜け出す。

 全く、余計なお世話だ。

 しかしソラ君もこんな当て付けをするような気の利かない子ではなかったのだがね。

 恋は盲目というが、さしものソラ君もそれには漏れなかったのかもしれない。

 逆にいえば、彼のあまり見ない男らしさの一端を見ているのかもしれない。


 ソラ君とエルー君が婚約をしたことは聖女院の皆が噂しているから知っている。

 ボクも会ったら祝福はするつもりだ。

 同じ寮で過ごした仲だし、親友だし、寮の皆からも「いつかくっつくだろう」と思っていた二人だからね。


 ……。


 ああ、寝不足で頭がろくに回っていない。

 ここのところ、無心になりたくてひたすら人工子宮の研究に没頭していた。

 だがあとは臨床試験を控えるだけになっているので、ボクの出番は終わってしまった。


 なんか大事なことを忘れているような気がするが、どうせ些事だろう。


「エレノア?今日は休んでもいいって言っただろう?」

「寝に来たんだよ。家にはうるさいのしかいなくてね」

「全く……奥のを使って良いが、起こさんからな。あとくれぐれもお家の騒動はこっちに持ち込まんでくれよ」

「そんなこと、分かってるよ」


 まったく、お説教は家だけで十分だ。

 アンネがよく使っている仮眠室のソファで寝る。

 はぁ……胸がざわざわして、なかなか寝付けない。




「――――起きろ」

「んんっ……アンネ、ただでさえ寝付けないんだから、起こさないでくれたまえ」

「エレノア。その御方は、起きないと……その、まずい」

「ん……?」


 遠くからアンネの声が聞こえてきて、最初に起こした声の主が別人だったことに気付く。


「貴様がふて寝をしていようと一向に構わんが、私は貴様と違って忙しいんだ。それに、奥方様と我が主についての話で、貴様が『待たせる』のは私が許さない」


 「奥方様」だなんて呼び方をする人は、ボクは一人しか知らない。

 急に胸ぐらを捕まれ目を開くと、そこには天使のごとき黄色い輪っかが見えた。


「シル……ヴィア様」

「貴様が研究開発のリーダーとして全く新しい研究開発を行って貰う。期限はひと月。これは我が主の命令だ」


 エリス様の、命令だって……!?


「103代聖女様の話は聞いているか?」

「は、はい……」

「完成物がある。これは貴様には説明してもいいと許可は得ているが、いいか?聖女様方の世界から送られた貴重な一次資料であり、元に戻せなければ研究にも使えなくなる。解剖することは許すが、くれぐれも壊すなよ」


 聖女様の世界から物を輸出しただって……?

 ソラ君でさえ向こうの世界の物は着ていた服以外ひとつたりとも持ってこれなかったのに……?


 いや、そんなことよりこの形には見覚えが……。


「これは……魔蓄器でしょうか?」

「蓄電器というらしい。『デンキ』……を貯めておくものだ。今後サツキ様がいらした時に行う改革に必要となる代物だ。貴様にはこれを改良し、魔力を電気に変えて蓄電する仕組み、また巨大な蓄電施設と送電の仕組みを作って貰う」

「なるほど、世界規模でこれが必要になる世の中になると?」


 シルヴィア様はこくりと頷いた。


「あとこれは報酬代わりではないが、少し節介を焼いてやる。奥方様の結納式には参加しろ」

「は……?」

「いいか、これは命令だ。お前に拒否権はない」


 な、なんだって言うんだよ、本当に皆して……!

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