閑話182 電子化
【下野皐視点】
ここは、どこ……?
真っ白な世界に、何も無……。
いや、何か、うっすらと奥に茶色い何かがあるような……。
「えっ、なんでこの間買ったダンボール達があるの!?」
あの高級PC達を使えなかったのだけが心残りだったのに。
スペックもメモリも積むだけ積んだし、あの処理速度ならアプリ開発やゲーム開発はもちろん、サーバーとしても役割を果たせるし、動画のエンコードにだって苦にならない。
その上うん百万の意味分からんくらい大きいラックに入れるようなサーバーも買ったし、弱小企業でしか働いたことの無い私には無縁の代物。
それに一億回の無駄なループ処理入れてメモリ使用量見るのだけが私の未来の楽しみだった。
「ふぅ……なんとか間に合ったわね。ヒヤヒヤしたわ」
「エ、エリスさんっ!!」
「サツキ、ここにいたのね」
「よ、良かったぁ……!」
エリスさんがここに居て、私は安心して抱き締めてしまった。
また私は、絵美さんみたいに大切な人を失ってしまうところだった。
「ところでここは……って、えっ……!?」
心が落ち着いてきて、ようやくエリスさんが宙に浮いていることに気付いた。
よく見たら私も浮いている……って、なんか私の身体がゆらゆらしている?
「ん?ええと、もしかして……私たち死んじゃったんですか……!?」
「んー……まぁ、似たようなもん?」
「ちょっ、笑い事じゃないですよっ!!」
えっ、本当に死んじゃったの、私達……?
でも、死ぬ前にバールで叩かれた痛みなんてなかったし……。
「正確には死んではいないわ。だって、異世界転移だもの」
「イセカイテンイ……異世界転移!?」
「そ。改めて自己紹介するわね。剣と魔法の世界、あのゲームの舞台、アモルトエリスの神、エリスよ」
えっちなお姉さん、神様だった……。
「でも、どうして私なんかを転移させたんですか?」
「剣と魔法の世界だから、全然電子化していないのよ」
「まさか、今もなお紙媒体……?」
「ええ。映像板や紙はあるけれど、魔力でないと動かないわ」
魔力の方が近未来感あるけどねぇ……。
「ほうほう、それはやりがいがありますな……」
だからあんなに沢山PCを買い込んだのね。
「でもそれだけじゃないわ。サクラがこの世界にいるのよ」
「桜ちゃんが……!?」
そうか、行方不明になった桜ちゃんはこっちの世界に逃げてたのね。
「他にも有名人いるわよ」
「私、別にそんなに有名人に詳しくないですよ」
ニュースとか見る暇もなかったし。
「あなたも知っているでしょう?『そらいろちゃんねる』」
「は……?ソラきゅんいるって……マ!?!?」




