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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第676話 治癒

「サクラ様!?」


 エリス様がわざわざドッキリをするくらいには、喜ばしい顔が見られると思っていたのだけれど、それは全くの見当違いだった。


「はぁっ、はぁっ……」


 手足がガタガタと震えていて、立っていられずその場に座り込む。

 あれは知っている。

 何か、とてつもないトラウマを思い出したときに来る、体の拒絶反応だ。


「シルヴィアさんっ!!居ますかっ!?」


 虚空に叫ぶも答えはなく、聞こえてくるのはサクラさんの息づかいのみ。

 やがて嘔気をし出したため、僕はサクラさんの背中をさする。


「嫌っ!絵美っ……!死んじゃ嫌っ!!」

「大丈夫、大丈夫だからっ!」


 聖女は前世で何かしら心か身体に傷を追ってきた人達。

 サクラさんもそれは例外ではないということだろう。


癒しの雫(ヒーリングドロップス)


 エルーちゃんが水魔法を使っていたのが見えたので、無詠唱の清浄(クリーン)で床を綺麗にした。


「ママ?」

「心を癒す上級水魔法です。私にはこれくらいしか……」

「ママ!死んじゃヤダからねっ!」

「大丈夫、寝ているだけだよ」

「もう、置いてくのは……許さないから……」


 感情的になる真桜ちゃんを見るのは二度目だ。

 真桜ちゃん……真さんは実母を早くに亡くしている。

 再婚した義母との思い出が良くないからこそ、実母を亡くしたことがトラウマになっているのだと思う。




 意識を失ったサクラさんをベッドに寝かせる。


「真桜様もお鎮まりくださいませ」

「はぁ、はぁ……あれ?」

「真桜ちゃん、落ちついた?」

「エルー、もしかしてあなた……人を癒す能力でもあるの?」

「いえ真桜様、そんなことは……」

「いや、なんか手を繋がれた時にね、ふっと軽くなったの」


 試しにエルーちゃんの手に触れると、ふっと前向きな気分になった。


「ほんとだ……」


 以前から触れたときに心が安心するような気はしていたんだけど、僕の場合恋している相手だから手を取ったときに愛おしさが溢れたのだと勘違いしていた。

 でもどうやらそうじゃなかったらしい。


 そういえば、ここのところエルーちゃんと一緒に寝ているのだけれど、悪い夢を見なくなった。

 僕の気持ちの問題かと思っていたけれど、エルーちゃんのお陰だったんだ……。


「私は……感じませんね。聖女様方はそれほどまでにお心を病まれていたのですね……」

「エルーちゃん、このまま二人の手を握っていてくれる?」

「は、はいっ!」

「サクラさん、お願い目を覚まして……!でないと、こんな仕打ちにしたエリス様に、文句の一つも言えないんですよっ!」


 僕もエルーちゃんと反対側の手を握ると、その手をぎゅっと握り返してきたのだ。


「サクラさんっ!」

「だい……じょうぶよ。それにね、サツキお姉ちゃんは……何も悪くないのよ」

「でも、皐さん関係のことで、何かよくないことを思い出したんでしょう?」

「……ええ。でもせめて話して楽になりたいわ。本当にろくな話じゃないけれど、いいかしら?」

「サクラ様、人払いは?」

「必要ないわ。ただセリーヌちゃんは抜けてもいいわよ。……胸糞悪い話だもの」

「いいえ、私ももう家族ですから」


 サクラさんの手が震えている。


「エルーちゃん、握っていてあげて」

「勿論です」

「ありがとう。これは私とサツキお姉ちゃん、そしてメイドの絵美との三人で居た頃の話よ」

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