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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話177 バッチ

下野皐(しものさつき)視点】

 会社をやめて数日。

 私は家でひたすらゲームをしていた。


 エリスさん曰く、私は海外に行くのだそうだが、向こうにゲーム機を持ち込めないから今のうちにやってフィードバックを得たいということらしい。


「あの、本当にこんなことしていてよろしいのでしょうか?」


 それでも罪悪感というものは往々にしてある。

 私は離れた職場のことを今でも考えてしまう。


 後輩君に預けたあの案件、どうなっているかしら?

 あそこは炎上しやすいから、あの子がパニックになっていないといいのだけれど。


 真っ昼間から仕事もせずゲームをしていることに、世俗から切り離されて悪いことをしている感覚というか、「働かざる者食うべからず」であるはずなのに、働かずに食っている現状に得もいえぬ違和感を覚えたというかなんというか。


 いわば土日祝日残業マシーンの私が急に暇を出され、まるでおもちゃを没収されてしまったショタのような感情を胸に抱いているようだった。


「サツキは考えすぎよ。そもそも、あなたはあれだけ頑張っていたのだから、もっともーっと!休むべきだわ!」


 エプロン姿でぷりぷりと怒るエリスさんが可愛らしくて、私の悩みなんて一瞬忘れそうになった。


 年齢までは教えてくれなかったけれど、これでも私より年上のお姉さんなんだそう。

 喪女の私と違って、こんなお茶目さもある美人、貰い手がいないわけないでしょうね……。


「でも、魔王を倒すだけで終わらないのは想定外でしたよ……。なんかあり得ないくらい強い裏ボスいるし、真エンディング見るのに最後のアイテム以外を全部集めないとなのに、レベルMAXまで上げないと出ないアイテムの一つが出てこないだなんて……」

「でも、結局アイテム集めしていたら気付いたらレベルなんて上がっているわよ。放ってると疫病や魔王復活で対応が必要になるもの」

「まぁ、それはそうですけど。でも、せめてそれならアイテム集めは楽しくさせてほしかったですね。単調作業は嫌いではないですが、性格上……いえ仕事柄そういうの、許せない(タチ)でして……」


 SE(システムエンジニア)は、世の中のそういった単調作業や毎日やる業務を自動化したり、少ない操作で簡単にできるようにするのが仕事。

 とはいえ実際のプログラムコードを書くPG(プログラマー)と違って、本来SEはその設計書を作るのが仕事だ。


 ただ大手ならそんなことはないのだろうけど、弱小企業の人手なんて足りていないのが常。

 なので私は設計書を作りながら、プログラムコードも書いていた。

 スポーツで例えるなら監督をしながら選手も兼任しているようなもんよね……。


 「結局自分がコーディングするなら設計書なんて書かなくてもいいじゃない」と思いがちだけれど、こうして私が居なくなった時に後任の人達がどういう設計だったのか分からなくなると、バグや改修があったときに直せなくなってしまう。

 なのでもし設計書を作っていなければ、今頃私の私用携帯に仕様確認やシステムの設計確認の電話がひっきりなしにかかっていることでしょうね。


 ……それはさておき、そういった単調作業が続くとバッチ化してワンタッチか自動(フルオート)化をしておきたいと思うのは、もう一種の職業病のようなものなのだろう。


「うーん、そういう収集系が楽しい子もいるからね。でもその……バッチ処理?だったかしら。出来るわよ?一応」

「えっ……?マジですか?」

「マジマジ。といっても、似たようなことと言ったほうがいいかしら?でもネタバレになるから、あなたが見つけられたらの話だけどね」


 マジなんて言葉を使っているのを見ると、本当に日本語が堪能な人だなと思う。

 プレイした感想を求められている関係上、ネタバレはしない決まりなんだそう。

 私としては早く終わらせて仕事したいなんて思ってしまうけれど、これも私の職業病なのだろうか?


「でもそうね、魔法のバッチ化って案は悪くな……」

「……エリスさん?」


 エリスさんがしゃべらなくなると突然、びちゃっという音が後ろから聞こえてきた。

 びちゃ……?


「ひゃああああんっ!?」

「えっ……?」


 エリスさんがエプロン姿のままその場でぺたんと女の子座りをすると、床に……その……()が滴っていた。


「やめっ、ああんっ、そんっなっ!ソラくっ……んっ!?舐めちゃっ……!?」


 服を着たままなのに、なんと扇情的な人なんだろうか。

 女同士なのに、その美しい姿から目が離せなくなる。


 ソラ君という人物は、彼女のイイ人なのだろう。

 名前からして日本の人なのだろうが、彼女がとても日本語が流暢なのは、その人の影響なのかも。

 彼氏か夫かは定かではないけれど、仕事も料理もできて何より絶世の美人であるエリスさんを捕まえられたソラ君とやらは、世界一の果報者だろうな。


「はぁっ、はぁ……お、おさまった……」

「……」


 こっちの台詞だよ。

 急に盛ってびっくりした。


「ごめんなさい、床汚しちゃって……。一種の禁断症状みたいなものよ」

「い、いえ……片付け手伝います」


 ……前言撤回。

 エリスさんは、とってもエッチなお姉さんだ。

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