第663話 減点
聖女祭が無事に終わって、中間考査の時期になる。
けれど何故か皆授業に集中できていない気がする。
……というより、みんな僕の顔を見ているような気がする。
「……?」
まあ見られるのはいつものことだけど、でも同じクラスの3Sの生徒に限ってはそんなことはなかったはずなのに。
1位 奏天 1000点
2位 エルーシア 967点
3位 リリエラ・マクラレン 902点
4位 イザベラ・フォークナー 778点
5位 セラフィー 754点
「えっ……?エルーちゃんが、二位……?」
数日後、張り出された中間考査の結果を見て、一番驚いていたのは僕だった。
いや、違う。
エルーちゃんは今まで通り着実に成績を伸ばしている。
だからこそ気付いたことがあった。
すらすらと5位の続きを見ていると、その理由が明確になっていく。
「もしかして……私と、エルーちゃん以外の成績だけが、下がっている……?」
おかしい。
まるで僕たち二人だけ不正で点数を貰ったみたいになってしまっている。
あの後他学年の成績も見たけれど、本当に僕とエルーちゃん以外成績が下がっているように感じた。
流石に他学年の半年前の正確な点数までは覚えていないけれど、トップ5や僕が勉強を教えている朱雀寮の生徒の成績が軒並み下がっていることくらいは僕なんかでも気付ける。
「ね、ねえ聞いた?昨日パフェ・スイートの新作!」
「ああ、あれよね!チョコシュークリーム!」
「そうそう!」
でも、学園じゅうを歩いていても、誰一人として試験の成績が下がったなんて話はしていなかった。
なんで?
どうして?
僕は不明なそれの正体が分からず、とてつもなく怖くなった。
まるで、理不尽でわけのわからない前世のいじめが再発するような、そんな予感にも思えて不気味だった。
「リリエラさんっ!」
「お疲れ様です、ソラ様」
リ、リリエラさんが、よそよそしい……!
僕だ。
僕が何かしてしまったんだ……。
聖徒会室に訪れると、僕はリリエラさんにすがり付いた。
「ちょっ、ソラ様……!?」
「リリエラさん、どうか無知な私に教えてくださいっ!」
「ど、どうしたというのですか、ソラ様!?」
「私とエルーちゃん以外の皆さんの中間考査の点数が下がったのって、もしかして私のせいですかっ!?私が……何かしてしまったからなんでしょうか……?」
藁にも縋るとはこのことか。
友人にすがり付いた時は、既に涙目になっていた。
「中間考査……点数……ああ、そのことですか」
その細い目は、当たり前のことを聞くなとでも言わんばかりの目をしていた。
「確かに……そうですね。皆様の成績が下がったのは、ソラ様のせいでしょう」
「そ、そんな……!?」
また僕は僕のせいで信頼を失い、人が離れていくのだろうか……?




