第659話 舌舐
「次の……聖女候補……」
マコトさんの時みたいにまた死なないように回避をしているのだそうだ。
「また、僕には内緒ですか……?」
つまり、僕に関連のある……。
「く、くぅ……。そんな子犬のような可愛らしい上目遣いを……!い、いえっ!だ、旦那様には今回は内緒ではないのです。恐らくご存じない方ですし」
「そうなんですね。えと、名前をお聞きしても?」
「下野皐様。サクラ様のお知り合いの方です」
……確かに、僕の知らない人のようだ。
でも僕の方からは知らなくても、向こうは僕のこと知ってる可能性があるんだよね。
僕の悪名……というか黒歴史、前世から消えてなくなってほしい。
サクラさんの知り合いだから、ワンチャンサクラさんみたく知らない可能性もあるけど……。
「なるほど、つまり今回は『サクラさんには秘密に』ってことですよね?」
「え、ええ……」
「どうしたんですか?」
「いえ、あの……旦那様?どうしてお離れにならないのでしょうか?」
僕はずっとシルヴィアさんの上で組み敷いたままだった。
「だって……この傷が、痛そうで……。あ、そうだ!これなら治りますか!?」
神薬を取り出すと、シルヴィアさんは慌て出した。
「そ、それを使ってはなりませんッ!」
「でも、これなら治るんですよね?」
「確かに神薬は主の血……いえ神力の塊ですので治りはしますが、それは貴重ですのでかすり傷程度で使うのは絶対に駄目です!」
「そ、そうですよね……」
僕も既にいくつか使っているし、在庫があまりないのは確かだ。
「こ、こんなもの、舐めておけば治ります!ですから旦那様はお気になさらず……」
でも、これは僕のせいだし……。
「あの、旦那様……?」
「……じゃあ、せめて代わりに僕が舐めます」
「は……?え、ちょっと!?」
「んれろっ」
「ひゃ、ひゃぁんっ!?ちょっ!?だ、だんなさまぁんっ!?」
ちょろちょろと腕の傷口に舌を這わせると、それだけでびくびくびくと何度も震えるシルヴィアさん。
……なんだかいけないことをしている気分になってくる。
「んれーーっ」
「んっ……ひゃあぁっ!駄目ですッ……!!」
声、もうちょっとなんとかなりませんかね……。
「ソラちゃん、大丈夫……?」
「「あっ……」」
扉の前に居たのは、真桜ちゃんとサクラさん、それにセリーヌちゃんだった。
「……修羅場?」
「いや、どっちかというと濡れ場のような……」
「授業計画という見方も……」
セリーヌちゃんまで、やかましいよ。
何の話……?




