第655話 二次
「おかえりなさいませ、ソラ様」
「はぁ、疲れたぞ……」
「ごめんね、ハープちゃん。送ってくれてありがとね」
「いや!疲れたのは、主のことではない……」
あのあと竜人種の女性達に取り囲まれて大変だったからね……。
「ソラ君!」
「わわっ!!」
エレノアさんの小さな体躯で僕を包み込む。
まあ、僕の方が小さいんだけど。
「なんて無茶するんだ、まったく……」
ラ・フランスの香りがふわりとしてから、僕を抱き締める力が強くなる。
「ふ、ふるひいれす、へれのあはん……」
「うるさい!心配ばかりかけて……」
「ごめんなさい」
「うふふ、お姉さまは素直じゃないんですから……」
「それよりこれ、証拠です」
映像魔法で録画した内容を再生する。
「んああっ!あんっ!」
ちょっ……!?
エレノアさんが慌ててアイヴィ王女の目と耳を塞ぐ。
「ソラ君、まさか竜人種が好みなのかい……?」
「ご、誤解ですっ!!」
「どもっているが」
「揚げ足取らないでくださいよ。バルトログ伯が娼館に居たんですから、仕方ないじゃないですか……」
「まあバルトログは娼館に入り浸る性欲の権化だからな。カイザー元伯爵が強かったのにバルトログが弱いのは、性欲発散に人生を費やしすぎたからだと噂があるくらいだ」
「知ってたのなら、聞かないでくださいよ……」
「好きな人のことは、何でも知りたいさ。なぁ、涼花君」
「ええ」
イジメ、ヨクナイ。
でもよく考えると今の僕って奇しくも女性達にエッチな映像を見せている男ってことになるんだよね……。
証拠映像とはいえ、なんだか複雑な気分だ……。
「主……我のこと、嫌いなのか?」
「そ、そうじゃないよ。というかそもそも、竜人種と龍神種は別でしょ……?」
「む、それはそうだが……」
「ん?そうなると、ソラ君は龍神種とならエッチなことをしたいと思っているということになるが……」
「なっ!?ちょっ!?」
「あ、主……そ、そうなのか……?」
「ええと、その……」
うるうるしてこっちを見てくるハープちゃんが犬みたいで、嘘を付きたくなくなってくる……。
「ノ、ノーコメントでっ!!」
「なるほど……。これを一度アレクシアに見せてこよう。作戦を立てる」
「では私は先に聖国に戻ります」
「わ、私も……行きます!」
「いえ、柊さんと涼花さんはこのまま一年生達の付き添いで帰ってください」
「ど、どうして……」
「なるほど、奴隷商が既にこちらまできていた場合、鉢合わせることになる……」
「確かに。もしそうなれば、聖女学園の生徒達にも二次被害が及ぶな……」
「これは完全に予期せぬ出来事です。速やかに、かつ慎重に進めるとしましょう」




