第654話 尋問
「うっ、うぅ……酷いよハープちゃん……。もうオムコイケナイ……」
同郷である聖女に、しかもほぼ同世代の女の子にそんなことバレるとか、もう最悪だよ……。
セ、セクハラで訴えられたりしないよね……?
「主っ!番がいないのなら我と……」
「高貴なる御方!」
「高貴なる御方!」
「素敵な翼ですわ!」
「こんなに艶のある尻尾は初めて見ますわ!」
「うおぁっ!?なっ、おい、勝手に触るな!」
「そういえば教皇龍様はすべての龍種が崇拝する存在だという話を聞いたことがある。だからこそ、種族の本能として教皇龍様のことが神々しく見えているのだろう」
人間で例えるなら肩書きに『石油王』って付いてるようなものなのかな……?
いや、教皇だし、どちらかというと『王様』みたいなものか。
「是非私とつがってください!」
「あ、主ぃ~……!!」
僕に助けを求められても……。
あ、そうだ。
<ハープちゃん、相談なんだけど……>
「貴様ら!我に気に入られたかったら、この男共に尋問しろ!」
「「はい、高貴なる御方!」」
「た、助かった……流石主!」
正直、一時しのぎにしかなってない気がするけど……。
「そういえば、もう私この世界で最強でもなんでもなくなっちゃったけど、ハープちゃんはまだ私を主だと思ってくれてるの?」
「なんだとっ!?」
「だって、もうエルーちゃんには魔法で勝てないし……」
「エルーシアは最上級魔法を使えないだろう?」
「いや、それはそうだけど……」
「なら主が最強だなっ!」
「それに、涼花さんには最上級魔法があってももう勝てないよ。それくらい、ハープちゃんなら分かるでしょう?」
無刀『夢幻』は思い描いたものを実現する『魔法のような刀』。
中でも青龍の使っていた『魔法陣破棄』をされてしまえば、たとえ最上級魔法を使えたとしても、魔法そのものが戦闘で意味をなさなくなる。
涼花さんは僕に勝てるような実力を持つようになってからというもの、頑なに僕を立てるべく僕との試合を拒否しているが、さすがに僕でも実力の差くらい分かってるつもりだ。
「リ、リョーカだって……!そう!我を召喚できないだろう!?」
「えっ、まぁそれはそうだけど……」
「ソラ様、教皇龍様がお困りになられているので、その辺で」
当事者の涼花さんは僕の肩をポンと叩いた。
顔がいいんだから、むやみやたらと近づけないでほしい……。
「高貴なる御方!この男、聖国から他種族の奴隷を買って子孫を残そうと企んでいたようです」
「尋問早っ!?」
おお、すごい、ハープちゃん効果!
「って……ええええっ!?」
バルトログ伯、最初は南の国の奴隷って言ってたよね……?
それに、聖国で、奴隷なんて……。
「ま、まさか……!?」




