第653話 教皇
後ろを見ても運悪く何もなかった。
仕方なく『透明化』を解除することにする。
「なっ、ニンゲンのガキだと!?おい衛兵!」
あっ、これ僕たちのこと分かってないやつだな……。
でも、問題はそれじゃない。
「なんだぁ!?」
「こいつら、貴族であるオレの会話を盗み聞きしていたちんちくりんのネズミ共だ!やってしまえ!」
「チッ、折角お楽しみの最中だったのによ……」
「ちんちくりんだと……?」
涼花さんは抜刀せずに2本の刀で二人の竜人種の衛兵相手に突きをしただけで気絶する。
……ステータスの暴力ともいう。
「この御方をどなたと心得る!?大聖女ソラ様と、聖女リン様であらせられるぞ!」
そんな時代劇じゃないんだから……。
「はぁ!?そんなちんちくりんが聖女なワケねぇだろうが!」
<主っ!?聞いていれば……なんだこの愚か者共は……!>
<その声は、教皇龍ちゃん?>
そう言えば、エリス様からハープちゃんの主従権いつの間にか奪っちゃったんだっけ……。
<もう我慢ならん!私が出るぞ!>
「あっ、ちょっ……!?」
「なっ……!?」
バルトログと名乗っていたであろう全裸の男性が飛びかかろうとした時、僕の手が白く光って小さな魔法陣が現れ、そこからハープちゃんが飛び出してきた。
「おお、美しい……!」
「は……?」
「なんと可憐な尻尾だ……!」
「それに高貴な角……!」
「え……?」
「す、素敵……!」
娼婦の女性まで、何言ってんの……!?
でも問題は男性陣だ。
そ、そこにいた竜人種の男性客全員のゾウさんが大変なことに……!?
「……!?!?こんの……ド変態共がああああッ!!!!」
分身は口ほどに物を言うではないけれど。
人間の僕から見てもハープちゃんは美人だし、そりゃあ竜人種から見ると絶世の美人になるんだろうな……。
とにもかくにも、その光景に恥ずかしくなったハープちゃんは光を暴れさせて男衆を吹き飛ばしていた。
「はぁっ、はぁっ!あんな、粗末な物、見せられてっ……!」
「ハープちゃん、落ち着いて……。それにそこまで粗末なわけでも……」
「こ、ここここれが落ち着いて居られるか!?主!」
凄い顔真っ赤……。
「おお、あなたの美貌は、まるで女神ぐぼほぉっ!?」
「ううううるさいっ!き、貴様らのなぞっ!!主のに比べればっ!!!ただの棒切れなんだからなっ!!!!」
「ちょぉっっ!?」
最後の一人であったバルトログ伯が吹き飛び、障子を倒しながら隣の部屋を突き破った。
ハ、ハープちゃん何言ってんの……!!
てかどうしてハープちゃんがそんなこと知ってるの……?
「そ、天先輩の、大きいんだ……」
あっ、社会的に終わった……。




