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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話174 楽しみ

下野(しもの)(さつき)視点】

「ええぇ~~っ!?さっちゃん、辞めちゃうのぉ~~~~!?」


 先輩の甲高い声が響く。

 フロア全体に響くからやめてほしい。


「先輩、声でかいですって……!」

「そ、そんなぁ~~!じゃあ一体、私は誰を頼ればいいの~~!?」


 いや、本来一人で片付けるものだから、その仕事。


「きっと先輩なら大丈夫ですよ」


 営業畑でよろしくやっててくださいな。

 セクハラ上司の風避けになってくれたことだけは忘れません。




 セクハラに堪えられず前の会社を辞めてこのシステム会社に来たけれど、前の会社より給料が低くなった。

 私みたいなのを雇ってくれる企業は、結局システム会社でも二次や三次の下請けとかを選り好みせずにやる弱小企業なので、人手も時間も足りず深夜まで残業する毎日だ。

 それでもあのセクハラ地獄よりは全然マシで、たまに来る上司のセクハラと、両親から来る「孫の顔」ハラを我慢すればいい。

 ま、その分残業量は半端ないとしても、最早残業のストレスで生理来なくなったし、どうせ短命だからと色々と諦めがちになっていた。


「私事ではございますが、今月限りで辞めることになりまして……。後任は瀬戸内となりますので、よろしくお願いします」


 後輩君、取引先との打ち合わせの時くらいはそんな泣きそうな顔するのやめなよ……。

 私が辞めても次の犠牲者が増えるだけだとおもうけれど、後輩君には一応学べることを学んだら辞めても良いと思うとアドバイスはしておいた。

 胸を見る以外は基本無害で良い子だからね、彼は。


「そうですか、寂しくなりますね。下野さん……もし良ければ弊社(ウチ)で社内SE(システムエンジニア)としてやりませんか?」

「……有難いお誘いで恐縮ですが、次の就職先は決まっておりまして……」

「そ、そうでしたか。それは失礼しました……」


 リモートでも胸見てるのは分かってるぞ。

 せめてちゃんと顔見て言ってほしい。


 でも生憎私、ないすばでーの美女に雇われる予定なんです。

 向こうは支度金として1000万ポンと用意してくれた上に、あんな立派なゲームを作れるほどの技術者が集うような所。

 どちらに尻尾を振るかなんて、明白でしょう?




「ただいまぁ~」

「おかえり、サツキ!さ、帰りましょ!ゴハン、出来てるわよ!」


 おっ、今日は天使のメイド!

 毎日様々なコスプレで出迎えてくれるエリスさんは私に新しい刺激をくれるけれど、毎回思うけど外で着て恥ずかしくないのかしら……?

 ま、海外の人のようだし感じ方が少し違うのかもね。




「ん~~!」

「おいしい?」

「とっても!それに、帰ったらこんな美人の手料理を食べられるなんて、もうそれだけで幸せ……」

「結構冷食使ってるわよ」

「それでもいいんですよ。美人が作っているのが大事なんです!」

「そーゆーもん?」

「そーゆーもんです!」


 散々胸の件でルッキズムに苛まれてきたのだから、これくらいの目の保養は許してほしいもんだ。

 連日私が帰るのが遅いせいか分からないけど、彼女が作ってる所なんて見たことない。

 それを想像するだけでご飯が進む。


 というか、家に帰って誰かが居るなんて、いつぶりだ……?


「明日は休みでしょう?パーっと買い物しましょ!」

「何を買うんですか?」

「あなたの次の仕事先に、デスクトップ(デスクトップPC)を買うのよ。あとついでに同僚のためにいくつかPCや周辺機器を買いたいわ」

「私、ハード(ハードウェア)は専門外なんですけど……」

「私もそこまで詳しいわけじゃないから、一緒に調べながらにしましょ」

「そうですね」


 ああでも、明日のことを考えるだけで楽しいのは、本当にいつぶりの事だろう。

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