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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話172 妹扱い

柚季(ゆうき)真桜(まお)視点】

 赤ん坊になって困ることは、活動時間が短すぎることだ。

 これでも一年経って大分睡眠時間も短くなってはきたけれど、それでも1日の半分を睡眠に費やしてしまうというのはなんだか時間を無駄にしている気分。


「くぅ……この身体が憎い……」

「一歳で闇堕ちするのは、気が早すぎますよ……」

「セリーヌもこの一年で順応してしまったし。つまらん!」

「そもそも、駄々のこね方が一歳児からは程遠すぎます」


 くぅ、なまじ私がよかれと思って難しい言葉やミームを教えていたばかりに、賢くなりすぎてしまった。

 この子、まだ年齢的には中等部一年とはいえこの聖女院の筆記試験を突破してくるほどの天才なのだ。

 だから私がちょっと教えるだけで、理解できてしまうのよね。


「それはセリーヌが私に赤ん坊らしさを求めているからに過ぎないのだよ」

「それは、どういうことでしょうか?」


 私は眼鏡をアイテムボックスから取り出し、「スッチャ」と言いながら装備する。

 うん、この容姿は眼鏡もよく似合うね。


「本来赤ん坊の頃に物心ついている訳がないのだから、自分自身が物心つく前にどんな駄々をこねていたかなど分からないはずなのだよ」

「まぁ、そう言われれば……」

「セリーヌは一人っ子だろう?だからセリーヌが育児を手伝ったことはないはず」

「……」

「だからキミが想像している『駄々をこねる赤ん坊の姿』は、あくまでもキミの想像の中の産物でしかないのだよ」

「難しい話をして、煙に巻こうとしていらっしゃいますか?」


 そんなことないのだよ、セリーヌ助手。


「あの、どや顔しているところ申し訳ないのですが」

「……なんだね、セリーヌ助手」

「私……一人っ子じゃないです。兎獣人は多産ですので、一度に沢山産みますから。妹と弟がいます」

「なん……だと……!?」


 突然のお姉さん属性に、かけていた眼鏡が空気を読むように私の顔から落ち、そのレンズがパリンと割れる。

 正確には単に眼鏡の大きさが私の小さな顔に合わずに落ちただけだが。


「セリーヌ、こんど家族を紹介なさい。うふふふふ、もふもふ天国……」

「ど、動機が不純です……」

「この茶番劇をどう見ていれば良いのかしらね?」


 ママとカーラが居たことを忘れていた。


「愛らしいではございませんか」

「そういうのは、マルクスに言ってあげなさいよ」

「あの、そのことでお二方にご相談がございまして……」


 あら素直。


「私、マルクスのことが好きだと気付いてしまったのですが」

「今更……?」

「いえ、そうではなく。それとなくアプローチをしているのです。でも当のマルクスは、私のことは妹のようにしか見ていないようで……。ほとほと困っているのです」

「ああ、なるほどね……」

「よぉし、ここは私に、任せなさい!」

「い、嫌な予感がしますぅ……」

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