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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第639話 借金

「そ、そんな……」

「少しだけ違います。ママもパパも、貴族はお金が民から無限に入ってくるものだと思っていたんです」

「それは、凄まじい誤解だな……」


 いくらでもお金が徴収できてあとは納めるだけなのなら、領主なんて職が必要なくなってしまう。


「ですが、そうではありませんでした。私が気付いたのは、伯爵家の知り合いの令嬢から言われたんです。『本来月に一回払うべき税が滞っているみたいですけど、大丈夫ですか?』って……。すぐにパパに確認しました。でも『なんとかなるから、安心しろ』としか言ってこなかったんです」


 おお、既にキナ臭い……。


「私は怖くなったのと同時に、ここで私がお金を用意できれば、パパにも褒めてもらえると思ったんです」

「私は『領主様は何もしていないので、代わりにノア様がお金の工面をしている』と伺っておりましたわ」

「それは、私が焦ってバタバタしていたところを、向こうの貴族に見られたからで……。私が王家のララより優れていることが示せれば、ドライ公爵支持者が増えて、いつものように()()()()()()()()から……」

「お菓子って……」


 どう考えても()()()()()()()のことだよね、それ……。


「ノア様?」

「……はっ!?す、すみません……!」

「いや、いいよ別に、気にしてないから。貴族ってそういうのあるだろうし」


 前世でも流石に()()は問題だけれど、お金で信用を得るというくらいのものはあった。

 例えば企業でも、お金払いの良いお客さんに対して特典を付けたり優遇するようなことはあるだろうし。

 きちんと納税して、その上で余ったお金でやる分には趣味の範囲だろうと思う。

 ま、今回は別だけどさ……。


「でも中にはよく思わない人もいるだろうから、外では言わないでよ?」

「は、はい……。気をつけます」


 なんとなくどんな教育……もといどう育ってきたのか分かってしまうなぁ……。


 ノアちゃんの話を聞いていて一瞬「普通に働けば良いのに」とは思ったけど、まあ人を使う側の貴族である以上、そういった思考にはならないんだろうな……。


「というかそもそも、払っていないのは子供の責任じゃないんだから、ノアちゃんは気にしなくて良いんだよ」

「貴族はそうも言ってはいられませんわ、お姉様」

「でも、子供が簡単に曲げられるものでもないでしょう?本来月に一度の納税も一応公爵家は四半期に一度まとめて払えれば不問になるはずだし……」

「決定的な証拠が出るまでは動けないというのは、もどかしいな……」


 もし四半期分のものを全部払えなかったのなら、多額の借金ということになる。

 天から地に落ちる前に、足掻くことはしておきたい。

 そうでもしないとハイエルフで容姿も十分だし、借金の(カタ)に不利な婚約とか普通にされそう……。


「わ、私……帰ったらパパに聞いてみます!」

「無理はしないでね。危なそうだったら家を捨てて、私か寮のところに来て良いから」

「あ、ありがとうございます……」


 幸いなのは、今は聖国を離れているからノアちゃん達に直接の被害はないことだ。

 でも逆に言えば、今こそ何かされても不思議じゃないんだよな。

 どうしてこう、僕が外出すると聖国に戻る必要のあることがすぐ出てくるかな……。

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