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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第637話 情報

「涼花さん、もう『魔王毒蜘蛛』は居ませんから……」

「す、すまない。虫だけは、どうしても苦手で……」

「せめてもう少し早く思い出していればよかったですね……」

「いや、こちらも事前に言っておくべきだった」


 悲鳴をあげるでもなく、無言で淡々と切り裂くの、怖すぎるよ……。




 辺りを一掃して聖女結界を張り、馬車まで戻ると、ルージュちゃんがお説教をしていた。


「お仲間と(つる)みたかったらお好きになされたらよろしいですわ!ですけれども、全員を巻き込まないでくださいまし!」

「あんた、子爵家の分際で私に意見する気?」

「楯突くとか言っている場合ですか!?私達は、あなたのせいで、全滅ですわ!聖女様方が同行していらっしゃらなければ私達、今頃全員死んでいましたのよ!?」

「じゃあ、どうすれば良かったのよ……」

「今回の迂回路が危険なことも、公爵家なら知っていて当然のことですわ。あなた様の無知のおかげで死んだも同然なのですから、あらゆることへの知識をつけておくことが、貴族を統べる者には必要ですわ」

「でも、それでも知らないことはいくらでもあるでしょ?」

「ええ。私自身、首席といえどもまだまだ知らないことだらけですし、そのせいで周りに迷惑をかけてばかりですわ。ですがそういう時は素直に知らないことを恥じて、周りに助言をいただいたりすればよろしいのです」


 まるで飴と鞭を使い分けるかのように、ルージュちゃんがやがて穏やかな表情に変わる。


「低位の貴族家である私はそんなこと致しませんが、自分の意見を敢えて言わずに、まずは周囲の方の意見を聞くようになされば、その恥はご自身の心の中だけで済みますわ。自分一人では開けない切り口からの意見や知識を得られたり、自分の意見を修正したり、良い意見を言う人は褒美を与えて囲うことで、更に尽くさせたり。それが貴族としての情報戦の勝ち残り方の鉄則ですわ」


 「貴族には貴族なりのアンテナの張り方があるんですのよ?」とお茶目な様子で言っていたけど、この世界で『アンテナを張る』って言って通用するの……?

 アンテナのアの字もないこの世界で、いったい誰が……って、広めたのは聖女しかいないか。


 頭の上で人差し指のアンテナを生やしてピコピコと指を曲げる動きがたいそう可愛らしい。


「ですが下の者には謝らなくても、目上の方には謝らねばなりませんわ。今回は私がお付き添い致しますから、一緒にソラお姉様に謝りましょう?」

「うっ……」


 嫌々そうにするノアちゃんの後ろには、最早誰も居なかった。


 取り巻きは、一度やらかしただけで彼女に付くことを選ばなくなった。

 もし一緒に謝っていたのなら、ルージュちゃんのようにノアちゃんからの信頼を得られただろうに。


「私に謝るのって、そんなに怖いかな……?」


 というかそもそも別に今回のことで僕は怒ってないんだけもさ……。


「ソラ様は慈愛の聖女様だからな。怒っていらっしゃる姿も大層可愛らしいが……」


 威厳がないって、遠回しに言われた……。


「どちらかというと、怒らせたら怖いのは()()だな……」


 背後霊みたく言わないでよ、神様でしょうに。

 でもそういえばエリス様、最近見かけないし声も聞かないな……。


 今、忙しいのかな……?

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― 新着の感想 ―
//でもそういえばエリス様、最近見かけないし声も聞かないな……。今、忙しいのかな……? ソラ様、その世界につれていく恩人のことがもっと気にかけたほうがいいですよ。
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