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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第595話 検閲

「検閲を通らずに……まさか、貴族の肩入れがあったと!?」


 検閲は僕が渡した魔水晶で人の鑑定はしているけれど、荷馬車に積んでいるものの全てを見ているわけではない。

 正確には改めさせられるけれど、貴族や王族は両国間で信用に足るだけの実績があり、更に一定額を払えば積み荷を見せずに通過できてしまう。

 とはいえ今は『患グラス』も配っているため、人が操られているなどしていれば、その人を鑑定したり見てさえいれば気付けたはず。


「もしかすると検閲をパスしたその目的は魔族に荷担していたわけではなかったのかもしれない。でも結果的にそのせいで他国に通してしまったことになるのなら、もう全部改めてもらうしかなくなってしまうよね……」

「そんな、一部の非協力的な方々のせいで……」


 今まで以上に入国検査が厳しくなれば、それだけ人員やそれを雇うお金が必要になるし、当然物流にも影響が出る。

 輸入や輸出額が上がるのはもちろんのこと、自国で賄おうとする動きは増えるだろうけど、それにも限りがある。

 単純に物価が高くなり、皆の財布が締め上げられてしまう。


「だから私も極力なら『全部見る』というのは避けたいんだ」

「それで、荷担した貴族を調べていたというわけですね」

「抜け道が知られているとなると、また新しい個体が同じように抜けてきちゃうからね……」


 ともあれ今だけはリッチはいない。

 つまり探す相手もまた、「今は操られていないであろう人」になってしまう。


 現状南の国か聖国の貴族という情報以外、ほとんど何もない。

 南の国は五国で一番領土が大きい国であり、その貴族の数も多い。

 そして五国の中心地であり交易の分岐点となる聖国は領土は狭いながらも国の首都程には非常に人口が密集しており、こちらも貴族の数が最多。

 要するに該当しそうな人が多すぎるのだ。

 こういう人探しは魔法じゃあできないし、僕にとっては畑違いだ。


 幸い貿易実績がどれくらいあるかなどはルークさん主導で聖女院の総務官の人達が動いてくれている。

 なので僕にできることといえば、もう一度同じことが起こったときに発見できるように、聖影の人達にも見張りなどをお願いしておくくらいだ。


「もどかしいけど、仕方ないね」


 ゲームだと魔物の発生地帯にマークが付いていたけれど、現実はそう都合よくいかないものだ。


「ただいま帰りました」

「お、主役が来たね!」


 寮の玄関のドアを開けると、何やら楽しそうなミア様がいた。


「主役って……?」

「ほらほら、新入生ちゃん達、来てるよ!」

「ああ、もうそんな時期なんですね」


 また僕が身分を偽る時が来てしまったらしい。

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