第59話 相談
連休明け。
ソーニャさん、セラフィーさん、シェリルさん、エルーちゃんと5人で下駄箱に着くと、またしても上向きの画鋲に遭遇した。
「えっ……!?」
「わ、私ではないですよっ!?」
「私でもないです……信じてはいただけないかもしれませんが……」
「落ち着いてください、私はお二人を疑ってはいませんよ。そもそも、私達は皆で一緒に来たのですから」
「ですが、私達が流した悪評のせいかもしれません……。本当に申し訳ございません……」
うーん……。
本当にこの間の悪評のせいなのかな?
「私には、あたかもお二人がやったかのように仕向けたかったんじゃないかと思うんですよね……」
「確かに……。責任転嫁としてはうってつけではありますからね……」
異世界で画鋲によるいじめが主流なのかはわからないけど。
あえて同じ手段を取るということはそういうことだろう。
「とすれば、犯人は私達が仲直りしていることを知らない先輩方、ということになりますね」
画鋲をアイテムボックスにいれつつ、あえて大きめの声でそう言った。
「シエラ、探偵みたい」
ゼラ元男爵とオルドリッジ元伯爵の爵位が剥奪されたことはみんなが知っている事実だ。
そして同学年の子なら、その二人に娘がいることは知られているはずだし、シエラがいじめを受けていたことも二人が流した噂で知っている。
あの時のシルヴィアさんのお告げの『あろうことか良民に毒をかけ、大聖女ソラ様を侮辱した。』のフレーズを聞いた勘の良い一年生は、ソラの弟子と二人の令嬢が浮かんだことだろう。
しかし一年生ならその後僕たちが仲良く登校しているのを知っているし、シェリルさんとセラフィーさんがソラの養子となったことは皆に話しているみたいだから、それらも一年生には周知の事実だ。
「そんなに難しい推理ではないと思いますよ」
まあ、これで釣れてくれるのなら楽なんだけど……。
放課後は涼花様と目安箱の回収をしていた。
同じ副会長としてなのかはわからないけど、聖徒会では涼花様と一緒に行動することが多い。
涼花様は面倒見もよくて僕に色々と教えてくれる、いい先輩だ。
「ごきげんよう、涼花様」
「涼花様、こんにちは!」
「こんにちは」
人気も高いので、注目も集めやすい。
僕なんて一緒にいるのにまるで蚊帳の外だ。
「シエラ君、これは君宛てのようだ」
聖徒会室に戻り仕分け作業を終えると、涼花様から1通渡された。
「ありがとうございます」
さっそく開けてみると、どうやらそれは恋の相談のようだった。
『恋愛相談をしたいのですが、恥ずかしすぎて他の人には聞いてほしくないのです。放課後、一人で屋上におりますので来てもらえませんか?』
恋に悩んでいる人に相談してどうするんだ……。
まあ相談相手が悪すぎることは置いといて、相談されたからには行かないとね。
「副会長、どちらへ?」
「すみません、お手洗いに」
そう言って僕は聖徒会室を出た。
屋上の重いドアを開けると、先輩方が僕を待ち構えていた。
懐かしくもいい思い出のない光景だった。
「待っていましたわ、シエラ副会長」
なるほど、団体様が釣れてしまったみたいだ……。




