閑話155 全年齢
【柚季真桜視点】
「一歳のお誕生日、おめでとうございます、真桜様!!」
「ついに、一歳になっちまった……」
「成長は喜ばしいことですよ、真桜様」
「そうよ、あなたはまだ歳を取って減るものがないでしょう?」
元同世代が年寄りみたいなこと言ってる……。
「せっかく築き上げてきた、私の『異世界チート赤ん坊』モノの属性が……」
「剥がれるのは赤ん坊の属性だけだし、乳児が幼児になるだけじゃ……」
「ちっちっちっ、甘いよリンちゃん!こういう転生スタートダッシュモノは『年齢制限』に阻まれるの。10才になると神殿で魔力や属性の測定があったり、冒険者になれるのが10才だったり。それまでは貴族などの権力者に隠れながら、自分がある程度の権力を打ち負かす力を身に付けるのよ!」
「言ってることの半分も分からないのだけれど……。神に一番近いのが神殿なら、この世界の神殿は聖女院じゃないの?」
「うっ……」
「隠すもなにも、聖女なら顔が割れているのでは?」
「う、うぐ……」
「そもそも聖女様は、この世界の最高権力者です」
「うぐぐ……」
ママ、リンちゃん、セリーヌから正論パンチを食らわせられてしまった。
三方から罵倒を浴びせられ、まるで人類の退化、新人から猿人に戻るかのように蹲る私。
「ふふ、ふふふ……これが闇落ち悪役令嬢の序章……」
「あなた悪役令嬢の前にそもそも聖女じゃないの。いったい何がしたかったの?」
母上、『悪役令嬢』と『聖女』は同じ属性じゃないし、兼業できるのよ。
オタクに理解のないママを持つと苦労するね……。
「ペ、ペンギンさんがいじめられている図から着想を得て、全部美女と美少女に変換したら最高のご褒美だとお考えになられたようです……」
「うんうん、セリーヌはよく分かってる」
だって美女と美少女に囲まれて、ジト目されながら悪態をつかれるなんて、とんだご褒美じゃない。
ぐぬぬしていたのは私の迫真の演技で、カーラが外野から映像魔法に納めるための布石でしかない。
「はぁ……!これはいい思い出ですね」
……あとで現像してもらおう。
「……あまりセリーヌに、変なこと教えないで頂戴」
なんで赤子の私の方が怒られてるの?
だが断る。
「失礼するぜ、姫!」
「「?」」
「オイオイ、今は男はお呼びじゃないよ。せっかく花園を築き上げていたのに……」
「あなたの花園じゃないわよ、別に」
じゃあ誰の花園よっ!?
「それでマルクス、何の用ですか?」
「涼花隊長からの伝言だ。ソラ様が、倒れたそうだ」
「は……?」
「えっ……?」
「今、危険な状態らしい」
オイオイオイオイ。
そっちの『年齢制限』は、別に求めてないっての!!




