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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第563話 懇願

「つまり、柊さんの試験の成績が良くなくて落ちそうだから、みんなで柊さんの試験勉強をお手伝いしていたと?」

「はい」


 まさかそんなことになっていたなんて……。


「学園の試験を落ちた人は流石に、歴代でもいなかったような……」


 ああでもさっきルークさんから証拠隠滅の話を聞いてしまったし、もしかしたら抹消されただけで本当は居るのかも。


「やっぱりそうなんですね……。皆さん頭良すぎですよ……」

「というより、数学と英語以外は、あのゲームをやっていれば分かる知識しかないんです。もし数学や英語が壊滅的だったとしても、他が全て7割くらい取れていれば合格できるんですよ」

「私、あのゲーム3ヶ月しかやってないですから……」

「うーん……でも、聖女は皆さん今まで学園に関わる必要があるんですよね?でしたら、聖女院や聖女の特権で何とかならないんでしょうか?」


 あまりこういったことは言いたくはないけれど、エリス様のお願いだし、使えるものは使うしかない。

 真桜ちゃんが椅子に立ちながら僕の鳩尾をペシペシしてくる。


「ルークに一応聞いたんだけど、『関わっていれば学園生である必要はない』らしいのよね」


 あ、そっか。

 「在学して関わる」以外の方法もあるって言ってたっけ……。

 じゃないと、そもそも学生の年齢で転生できないこともあるもんね。


 でもそれって「年齢的に通えるのに通えない」のとはまた別だよね。

 それは、柊さんがあんまりじゃないかな……。


「でも真桜ちゃんが教えているなら、問題なさそうですね」


 真桜ちゃんの過去のことはちょっと聞いているけれど、前世の真さんは僕なんかよりもずっと頭の良い私立の進学校。

 時期的には入試の手前くらいの時期の転移だったから、僕なんかよりも数学と英語の試験については記憶に新しいだろう。


「それが、全然分からないんです……」

「えっ」

「私、教えるの下手かもしれん……」

「ええっ!?で、でも真桜ちゃん、以前マヤ様に魔法教えてたよね?」

「あの娘、一を話せば五くらい理解してくれたから……」


 確かにマヤ様も三年生で次席を取るくらい頭良いからなぁ……。

 頭が良いからといって、それイコール教えるのが上手いとはならないのかもしれない。

 そこで躓いたことがなければ、なぜ躓いているのかが分からないもんね。


「でも、もうそんなに時間は残っていないですし……」


 僕も特待生とはいえ学園はサボりたくないし、何よりこの時期は会長の仕事が山のようにある。


「ね、ソラちゃん!おねがい……」

「くぅ……可愛いっ……!」


 僕の細い手首の直径にも満たない長さの掌を合わせて、一生懸命お願いのポーズを取る真桜ちゃん。


「私も学園があるので平日は無理ですから……真桜ちゃんに教え方のヒントを託すことにしようと思います。別の部屋に行きましょうか」

「やった♪」

「私達も、ご一緒してよろしいでしょうか?」

「いや、多分二人は一緒にいない方がいいかな」

「そ、そんな……!?」

「いや多分、東子ちゃんには逆効果になっちゃうかな。今から話すことは、二人にとってちんぷんかんぷんだろうし……」

「?」

「とにかく、東子ちゃんはエルーちゃんがお勉強を見てあげて。試験勉強大丈夫そうならセリーヌちゃん達と休憩しててよ」


 そう言って僕は真桜ちゃんを抱え柊さんの部屋を出た。

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