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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第7章 慷慨憤激
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第52話 変化

 今日から連休なんだけど、やることがなかった。


 というより、僕になにもさせてくれなかった。


 この間高熱で倒れた時、みんなに心配された。


 エルーちゃんもその後からそっけなくなったが、何かしようとすると身体の心配からするようになった。


 聖女院も今回のことを重く受け止めたようで、どうやらエリス様とサクラさんからもお達しが来て「ソラになにもさせるな」というお触れが出回っているらしい……。

 完全に割れ物のような扱いだ。


 怒りに身をまかせていたとはいえ、やっていたことは雨の日に自転車に乗っていたようなものだから、我ながら子供だなと思ってしまう。




 そんなわけで今に至る。


「なるほど。でもボクから見てもシエラ君は働きすぎだと思うよ。もう少しボクを見習ってほしいね」


 エレノア様は自らのTシャツに書かれた『怠惰』の字を親指で指してそう言う。

 怠けるのはちょっと違うような……。

 

「あ、あの……」


 シェリルさんが自分から話しかけてくるのは珍しい。


「シエラ様、もしよろしければ私に勉強を教えてくださいませんでしょうか……?」

「構いませんよ。この通り……暇ですし」


 ぱあっと笑顔になるシェリルさん。


「お、いいじゃない!せっかくならみんないるんだし、朱雀寮の皆で勉強会でもやりましょうよ!」

「ミア様、いいね」


 どんどん話が広がってゆく。


 と、セラフィーさんが露骨に嫌そうな顔をした。

 Aクラスだったはずだけど、勉強はあまり好きじゃないのかな?


「セラフィー……そんな顔しないで。二人で変わるって決めたんでしょう?」


 シェリルさんが励ます。

 この間の件で、二人も変わろうとしているみたいだ。

 前に進もうとしてくれているなら、僕も応援しなくちゃね。


「じゃ、じゃあシエラ様……明日は私たちと戦闘実技の特訓に付き合って貰えませんか?」

「うっ……」


 今度はシェリルさんがあからさまに嫌そうな顔をした。

 好みがはっきり分かれているみたいだ……。


「構いませんが……寮の外でやるわけにはいきませんよね……?」

「一応休日でも申請すれば体育館や多目的ホールを使うことはできるよ。ただ、みんな同じこと考えるから利用者は多いと思うけど……」


 ミア様から代案を出された。


「うーん……せっかくですし、もっと広いところにしましょう」

「えっ?多目的ホールより広いところなんて…………ちょ、()()()まさか……!?」


 感のいいミア様。

 やはりSクラスなだけはある。


「はい。明日は聖女院の庭園へ行きましょう。皆さんも一緒にどうですか?」

「い、いいの!?行く行くっ!!」

「決まりですね。」




 エルーちゃんに聖女院へ行くことの伝言をお願いし、今日は勉強に取りかかる。


 僕も聞かれたらアドバイスする方式にして、聖女史の教科書を勉強していた。


 


 ちらっと見ると、セラフィーさんもきちんと勉強をしていた。


「セラフィーさんも杞憂だったみたいですね」

「そんなことないです……。勉強は嫌いですから」

「参考までに、どうして嫌いになったのかお聞きしても?」


 Aクラスだし、勉強が出来ないからとかではない気がする。


「家庭教師の先生が……苦手だったんです。休憩したり時間までにできないとすぐ手が出る先生だったので……」

「それは……すみません、少し軽率に聞いてしまいましたね」

「いいんです、もう過去にできたのですから」


 最近まで教えられていたということか。

 体罰は集中力もなくしてしまうらしいからね……。


「シエラ様は……勉強はお好きでしたか?」

「うーん……考えたことありませんでしたが、嫌いではなかったと思います」

「理由をお聞きしても?」

「私の場合はセラフィーさんの逆ですね。学校では常にいじめられていましたが、授業の時間になると先生の目があるのでいじめられないんですよ。だからあの世界では自分の部屋に引きこもっているときと学校の授業の時間くらいしか私の好きな時間はなかったです」

「も、申し訳ありません……こちらこそ軽率なことを……」

「いいんですよ。お互いに過ぎたことですからね」


 これからは()つのではなく、褒めてあげたい。

 僕はセラフィーさんの頭を撫でる。


「今までよく頑張りましたね……。これからは、自分のペースで休憩しながらやっていいんです。これを機に、セラフィーさんが勉強を徐々に好きになっていけたらいいですね」

「シエラ様……」


 お互いにまだ癒えないかもしれないけど、それでもセラフィーさんが頑張っているのを見れば、なんだか僕も頑張れるような気がした。

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