第498話 取得
聖女院の「切札」の効果は凄まじいもので、僕が療養している間、僕がこの世界で関わってきた人たちがたくさん見舞いに来てくれた。
昨日もアヴリルさんやルシアさん、アール王子などが来てくれた。
アール王子はエドナさんを王太子妃に迎えて落ち着いたのかやけにモテるようになったらしく、既に側室が二人いるらしい。
側室に関してはエドナさんの方がむしろ積極的らしく、アール王子の方が受け身だという。
それでも「平民の出だからとエドナを敬わない側室はいらない」と言いきったのだから、本当に成長したなと思う。
こうやって心配しにきてくれると、「前世に居場所がなくても、こっちの世界にはあなたの居場所がある」と言ってくれているかのようで、なんだか嬉しかった。
そのおかげか体調も良くなってきて、普通に歩けるくらいにはなってきた。
「ソラさま、はやくげんきになってね」
「うん!ミィちゃん、素敵なお花ありがとう!」
今日は孤児院のみんなが来てくれた。
「クゥーン……」
「リルもありがと。ほら、おいで」
「バウッ!」
ああ、ふかふかしてきもちいい……。
「幼女……ソラ様……フェンリル様……供給過多……」
何故かメルヴィナさんがぷるぷるしていた。
「院長も胡桃さんも、ありがとうございます」
「いえ、ソラ様も御壮健で。あ、こら!それはソラ様のぬいぐるみですのよ!?」
「ふふ、構いませんよ。ちゃんとお姉さんしているんですね」
「もちろんですの!」
僕が立ち止まっている間にも、みんな前に進んでるんだなと実感する。
「またね、ソラさま」
「ばいばい」
院長先生に連れられて部屋をあとにする姿を見送る。
「乾燥する季節ですが、こうも見せつけられると潤ってしまいますね」
「いったい何が潤うんです……?」
「そんな……言わせないでくださいませ……!」
忍ちゃんみたいなこと言わないでよ、メルヴィナさん。
「可愛らしかったですね」
「うんう……ってぇええ!?」
エルーちゃんかと思って振り向くと、そこに居たのはなんとセリーヌちゃん。
「なっ……!?セリーヌちゃんが、どうしてここに……!?」
「ご、ごきげんよう、ソラ様……」
「えと……真桜ちゃんは?」
「……」
無言で下を向くと、セリーヌちゃんは目に見えないボールを持っているかのような仕草で何かを抱えていた。
……もしかして、そこにいるの?
「こ、こちらをどうぞ……」
そして目に見えない――いや単に獏で透明になっているだけだろうけど――何かを僕に渡してきた。
僕が恐る恐るそれを受けとると、久しく見ていなかった無詠唱の無属性魔法『描画』による文字演出で、僕の目の前にウィンドウ画面がポップされた。
『ソラは むを しゅとくした!』
無とはいったい……。




