閑話132 被害者
【柚季真桜視点】
「ねぇ……わたし、かわいい?」
「ええ、真桜様は世界一可愛らしいお方でございます!」
口割け女のような台詞に、面白い返しができないカーラなんて、つまらない。
「ママ、わたしたち、きらわれちゃった」
「そうねぇ……」
親子二人でぼーっとしていた。
推しに嫌われた。
この間まで私が来たらその可愛い頬を更に緩ませてくれる推しが、私を見た途端に悲鳴をあげて逃げ出す始末。
「セリーヌぅ……」
「よ、よしよし……」
「ばぶぅ……」
「ああ、真桜様が幼児退行してしまわれました……」
こちとら、元から幼児だよ。
「それだけあの子にとって、凛ちゃんの時の出来事が受け入れられなかったのよ」
「わたしめんしきなかったんだけど、ママはあるの?」
「ないわよ。ソラちゃんだってここに来るまでしらなかったもの」
「あのゆーめいじんをしらないなんて、ママのほーがどうかしてるよ……」
「そ、そこまでいうことないじゃない!だってネットなんかやったことなかったし……。エバ聖だって、父親に許可貰うまで大変だったのよ!」
それって単にママに信用がなくて、ゲームやらせると際限なくやるだろうって思われていただけでは?
「ネット」って一括りにしているところが既に情弱を着て歩いているようなもんだよ。
このスマホ世代に、よくそんな化石みたいな人がいたものだ。
「それで、リンってどんなオンナなの?」
ソラちゃんを泣かすような女、きっとろくでもない。
「……」
なんか、私の前世のいじめなんて、ちっぽけなもんだね。
というかソラきゅん、そんな過酷な環境にいてよく自殺しようとしなかったね。
もはや奇跡だよ。
私は学校では虐めなんてなかったし、家での嫌がらせだってソラきゅん以下だ。
まあ最後には家族に殺されたけど、それでも最低限家族のふりをするために直接的ないじめはあまりなかった。
凛って子も、境遇としてはソラきゅんに近い。
「こんなときに、エリスはなにしてるの?」
「凛ちゃんの転移の準備よ」
「そんなにかかるものなの?」
「真桜の転生は魂だけの移動でよかったけど、身体ごと移動する必要がある転移は、それだけ時間もかかるそうよ。急ぐと魂が欠けたり、身体が欠けたりするんだって。ソラちゃんの時なんか皮膚細胞の一つすら欠けさせないようにって、時間かけまくっていたのよ?」
わざわざ一ヶ月前に「宣告」なんてして仰々しいと思っていたが、きちんと理由があったのか。
ソラきゅんはしばらくシュライヒ公爵領で療養するらしい。
「はなればなれになるのはいいけど、このままはイヤ」
「でも私達が近付くのは逆効果だと思うわよ。こういうのは時間が解決してくれるものだわ」
そんな……それじゃあソラきゅんの成長日記が取れないじゃない!
「セリーヌ、いくよ」
「ど、どちらに?」
「さくせんかいぎ!」
私はもう、後悔する生き方はしたくないのだ。




