第5話 天庭
しばらくサクラさんとエルーちゃんが話を弾ませているさまをルークさんと眺めていた。
ルークさんは「サクラ様が聖女になられて初めて赴いたのが西の村だったのです」と補足してくれた。
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「さて、ここから先は聖女同士のお話をいたしましょう。 ソラ君、ほら、ついてきて」
言われるままに手を取ると、ルークさんとエルーちゃんは何かを察したのか「いってらっしゃいませ」と口を揃えてお辞儀をした。
次の瞬間、ぐっと自分の体が持っていかれるような、はたまた無重力のような感覚にも感じる奇妙な感覚を覚える。
それが終わるや否や、僕たちは真っ白な空間に移動していた。
「こ、ここは……?」
「ここはエバ聖の最後のアイテムを獲得した聖女とエリスだけが来れる空間。 天庭と言われる場所よ」
「え、エバ聖……!?」
略し方は僕と違う気がするけど、なんだか耳馴染みのある単語。
「そ♪ EVER SAINT FANTASY、あなたもさっきまでやってたでしょう?」
こんなところであのゲームの名前が出るとは思わなかった。
というかみんなエバ聖って略してたんだ……。
僕の感性が他人とずれているのは散々姉からも怒られてきたことだけれど、こんなところで突きつけられるとは思っていなかった。
けど、どうしてさっきまでやっていたことまでバレてるんだろう?
神様は何でも見ているということなんだろうか?
……神様、サクラさんに気軽に何でも教えすぎでは?
いくら神様でも、僕のプライバシーくらいは守ってほしい。
「キミにあのゲームを渡した女性がいたでしょう? 覚えてない?」
「え? あのゲームは郵便受けに私宛で入っていたので。 差出人も書いてなかったですし……」
「はぁ……。 まったくエリスったら、私の仕事を増やさないで欲しいわ。 いつもは居るくせに、天庭にもいないし……」
サクラさんは呆れてばかりのようだ。
そのエリス様とやらは僕と同じような駄目人間の類いかもしれない。
いや、人間じゃないから……ええと、駄目神様?
サクラさんの後ろをついていくと、テーブルと白いソファーが置かれた部屋に案内される。
「遠慮せず座って」
サクラさんが促し先に座るので、僕も追うように反対側に座る。
ふかっとした雲みたいなソファーで、肌心地がとてもよい。
これ真っ白で綿みたいだけど、本当に雲に座ってるんじゃないんだよね?
「エバ聖はエリスがこちらの世界に招待したいと思った人間に配るゲームよ。 このゲームで最後のアイテムである『聖女への片道切符』を受け取ったとき、こちらの世界に転移してくる仕組みになっているの」
「ということは、サクラさんもええと……エバ聖を?」
「そうよ。 私は100時間とちょっとでコンプしたからあまり詳しい方ではないけどね」
「えっ……ひゃく……!?」
は、早すぎる……!
いや、逆に僕がただのんびりやってただけか。
でも、少しだけ年の離れた大人の女性と同じゲームについて話せることなんて、前世ではなかった。
「ソラ君は、どれくらいやっていたのかしら?」
「私は――」
それから僕たちはしばらく、同じゲームを楽しんだ者同士でオタクトークに花を咲かせた――




