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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第6章 道聴塗説
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第46話 絶縁

 セラフィーさんとシェリルさんに肩を貸しつつ、1階の共有スペースに向かった。


 共有スペースのソファに座らせる。


「ええと……シエラ・シュライヒ改め、カナデ・ソラです。皆さん、騙していてすみませんでした……」

「大聖女さまっ、そんな……顔をおあげください!」


 フローリアさんも恭しい。

 それが少し寂しかった。

 僕はあえてシエラのウィッグを取り出して着けた。


「皆さん、今までのように敬語もなしで大丈夫ですよ……。私はここの皆さんが大好きですから」

「わか……分かったよ、シエラ君」

「私は、今まで通りには……難しそうだよ……」

「すみません……」


 確かにミア様は、聖女信仰が強かったからね……。


「ああいや、そういうことではなくてっ!どうしよう私、ソラ様と会っているどころか……毎日寝食を共にしているなんてっ!ええと、ええとっ!サ…………サイン貰ってもいいですか!?」

「それは後にしてください……」

「はい……」


 耳が垂れてしゅんとなるミア様。

 でも、ミア様のお陰で少し気が晴れた気がした。




「エルーちゃん、この人は確か……シルヴィアさんと言っていたけれど、エリス様の従者さんで合ってる?」

「は、はい。大天使シルヴィア様。エリス様の従者の天使族の方で、序列はエリス様、聖女様に次ぐ権限であらせられます。エリス様と感情や意思を共有されていると言われており、地上に降りられないエリス様の代行者様とも呼ばれていらっしゃいます」


 感覚を共有しているシルヴィアさんがいるということは、さっきの場は()()()()()()()()()()ということだろう。


「ええと、さっき私に対して『奥方様』と言っていたのですが、その理由はどなたかご存じでしょうか?」




 そう聞くと静かになり、外の雨音が響く音のみとなった。




「…………ごめん、()()()。それには答えられないんだ」


 代表してエレノア様がそう答えた。

 知らないではなく答えられない。

 サクラさんと同じ回答だ。


「…………わかりました。それは本人に聞くことにします」


 あやふやなままにするのはあまり好きじゃないけど、約束は約束だ。


 勝手に知らない人の奥さんにされていた、なんてことにはなっていないといいんだけど……。

 というか、何で旦那様じゃなくて奥様なの……?




 僕は()()にヒールとキュアで回復させておく。

 風邪の場合はキュアで菌を取り除いたりヒールで体力を回復したりはできるが、熱そのものは神薬でも使わない限り無理やり押さえることはできないだろう。

 せめて早く冷めるように、冷却シートをアイテムボックスから取り出して額に貼る。

 熱は引いてないが、穏やかな顔をして寝たのでひとまずソファに寝かせておいた。


 というか天使の輪っかって寝そべったままでも頭の上をキープするんだね……。

 狭いところ通るときどうするんだろう……?



「さて……セラフィーさんとシェリルさんもその手足、見せていただけますか?」


 びくっと反応する二人。

 あんなことしたを手前、罪悪感はあるようだ。


 無言で近づきそのままヒールと唱え、外傷と毒で減った体力を回復させる。


「ありがとう……ございます」

「その痣は、親から受けたものですか?」


 そう。

 この二人は明らかにいじめ慣れていなかった。

 声も手足も震えていたからだ。


「は、はい……。あの、申し訳……」

「いえ、やったこと自体は別に怒っていないんです」

「えっ……ですが、大聖女様を……」

「政治利用したことですか?それなら、私はその時()()()でしたし。……この世界は貴族社会ですから、学校を通して政治や社交を学ぶことは大事なことです。そのために()()()()()()()()()()()()()シエラを使うことは構いません。使われる私が悪いだけですから」

「シエラちゃん……」


 トーンを落として、続ける。


「ですが、今回使った毒は別です」


 もちろん、道徳的にまずい事は本人達が一番分かっているだろう。

 心配すべきなのは別のことだ。


「毒のように危険なものを扱うということは、今回みたく自分自身に降りかかってくることもあるんです。分かっていますか……?貴女達、死んでいたかもしれないのですよ!?」


 拳銃を持つなら、その拳銃を奪われて自分が撃たれる覚悟が必要だ。


「もっと、自分の身を大事にしてください。貴女の命は、誰にも代えられないですから……」


 まるで過去の自分に言い聞かせるようにそう言った。


「ソラ様……。ありがとう……ございます……」


 僕の胸で泣く二人。




「私も、両親から毎日のように虐められていました」

「えっ……」


「その時の私は、あるがままを受け入れていました。ですが、それではいけなかったのだと気付きました……。今回のことがとても危険だということも分からないような貴女達を貶めるだけの両親なら、一刻も早く縁を切ることをおすすめします……」


 僕の時は縁の方から勝手に切れてくれたが、今回は自分で選べるのだから、選んでもらおう。


「選んでください。貴女達が縁を切りたいというのなら、私が手を貸します」




 しばし沈黙と雨音が響き、やがてそれが破られる。


「……私は、離れようと思います」

「わ、私も……」

「わかりました。エルーちゃん、申し訳ないんだけど……」

「はい、ルーク様ですね?」

「うん、呼んでもらえるかな……?あ、私の部屋のワープ陣使っていいから!」


 すたすたと二階に上がってゆくエルーちゃん。


「わ、ワープ陣を置いていたのかい!?」


 クラフト研究部的には気になるか。

 必要魔力的にいえば、クラフト界の最高峰だからね……。

 まあ素材を用意したところで、聖女しか作れないだろうけど……。


「勝手に色々置いてすみません……」

「い、いえ……。自分の部屋は基本的に自由ですから」

「フローリアさん……ありがとうございます」




 話が終わったときに突如、ソファに横になっていた銀色の髪がふとふわっと浮いた。

 そのまま横になったまま宙に浮くと、神秘的に光りだした。




「きゃっ!?」

「な、なんだ!?」


 光とともに、シルヴィアさんの背中から真っ白で大きな翼が生える。


 光はやがて収束して宙に浮いたシルヴィアさんの中へと消えてゆき、元のソファーに降りると、シルヴィアさんは体を起こした。


「奥方様……申し訳ありませんでした……」

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