第35話 失踪
朝。
下に降りると、ソーニャさんが見当たらなかった。
「おはようございます。 ソーニャさんは?」
「それが……一昨日から、帰ってきてないの。 外泊許可はしているから多分孤児院に帰っていたんだと思うけど……」
何かあったのかな?
ちょっと心配だ。
「帰りでいいなら、私が見に行きましょうか?」
「ごめんなさい、お願いできるかしら? 孤児院への地図は担任の先生に聞けばもらえると思うわ」
「わかりました」
◆◆◆◆◆
フローリアさんと別れて学園に向かう。
「シエラ嬢、おはようございます」
「おはようございます」
教室に着くと、イザベラさんとリリエラさんが挨拶してくれた。
「おはようございます。 リリエラさん、少しよろしいでしょうか?」
「はい」
「聖徒会へ応募されていたと思いますが、私がリリエラさんを風紀委員長に推薦いたしました。 勝手で申し訳ないのですが、引き受けてくださいますか……?」
「えっ……!?」
あれ……なんか思っていたのと違う反応。
応募したということは、聖徒会へ入りたかったはず。
だからこそ、喜ぶと思ったんだけど……。
もしかして、風紀委員長への配属が気に入らなかったのかな?
「ええと……失礼を承知でお聞きしますが、シエラ嬢は既に聖徒会のメンバーなのですか?」
あっ、そっちの話か……。
「ええと……実は先日、聖徒会長のソフィア様から副会長に任命をされまして……」
「「ええっ!?」」
周囲がざわつく。
みんな僕が次期会長予備軍であるということを察したらしい。
だけど、リリエラさんは驚かずこちらを見つめ返してくる。
「そうですか。 ありがとうございます、シエラ副会長」
また大層な肩書きになってしまったなぁ……。
◆◆◆◆◆
授業は少し上の空だった。
授業よりも、空いている隣の席の方が気になって仕方がなかった。
結局授業が終わっても、ソーニャさんは来なかった。
「シエラさんっ! ちょっといいですかっ?」
マリエッタ先生がちょいちょいと教壇に招いてくる。
体と目線を降ろして話を聞く。
「ソーニャさんの件なんですけれどっ……何か聞いてはいませんかっ?」
「ちょうど私もお伺いしようと思っていたんです。 実は私も休日の初日に孤児院に行くと伺って以降、ソーニャさんを見ていないんです……。 マリエッタ先生は何かご存知でしょうか?」
「いいえ……。 なるほどっ、孤児院に行っていたんですね。 でも返ってこないということは、何かあったのでしょうか?」
しゅんとなるマリエッタ先生。
無口だけれど、無断欠席をするようなタイプではない。
なおさら怖いな、何かの犯罪に巻き込まれたとか?
「あの、実は寮母のフローリアさんに頼まれて、一度孤児院へ確認しに行くつもりなんです。 それでその……孤児院の場所ってお分かりになりますか?」
「なるほどっ!わかりました。 本当は私が行きたいところですが、ここは同級生のシエラさんにお任せしようと思いますっ! 地図、持ってきますね!」
しゅたたたっと走ってマリエッタ先生が出ていく。
「リリエラさん、あの……」
「聖徒会の件は大丈夫よ。 会長には私から伝えておくわ。 その代わり、ソーニャさんのことは頼んだわよ!」
やっぱりリリエラさんは少し気が強いところがあるけど、とてもいい人だ。
「ありがとうございます! 行ってきます!」
マリエッタ先生から地図をもらって、学園の外へ行く。
◆◆◆◆◆
孤児院は学園からも聖女院からも少し遠いところにあった。
「ごめんくださーい……。 誰か、いらっしゃいますかー?」
孤児院の周りには誰もいなかった。
中に入れば誰かいるだろうか。
中に入っても暗く、しんとしていた。
だれもいないのかな?
奥の部屋に入る。
ここは食堂だろうか?
片付けられた食器に僕は誰もいないのだと、そう思っていた。
もしかして地図の場所、間違えたかな……?
隣の部屋は……寝室だろうか?
「っ……」
「……?」
人の気配がしたのでそちらを見ると、子供たちと一緒にうずくまるソーニャさんがいた。
「ソーニャさん!」
「嘘……シエラ……。 どうして……?」
「探したんですよ。 あの、何かあったんですか?」
「ダメ、シエラ……! 来ちゃ……ダメ!」
「うぅ……」
「こほっ……こほっ」
よく見ると、子供たちもソーニャさんもみんな熱を出したように顔が赤くなっており、腕には黒い斑点ができていた。




