第34話 剣聖
他の人たちには訓練に戻ってもらい、少し離れたところで見学させてもらうことに。
アレンさんからお話を聞く。
「ソラ様のお話はサクラから聞き及んでおります」
うわぁ……呼び捨てだ。
大人な関係だぁ……!
「そういえば、ソラ様の、その……性別についても……お伺いしました」
ああ、そういえば……。
「なんかすみません……。 サクラさん、嬉々としていたでしょう……?」
「ええ……本当にびっくりしました」
「お互い、サクラさんには苦労してるみたいですね……」
「い、いえ。 その分私はご褒美をもらっていますし……。 あの日の夜は……って、こんな下世話な話、大聖女さまにお聞かせすることではないですね」
ホントだよ……急に何言い出すのさ……。
ま、まあ僕は男だからいいけどさ。
なんか心配して損した……。
「それより、お時間があるようでしたら私と一戦、交えていただけませんか?」
「別に構いませんが……」
訓練場の一角を借りて、対峙する。
「おお、剣聖である隊長と大聖女さまの対戦だとっ!」
「これは見なければ!」
◆◆◆◆◆
気がつくと、訓練していた騎士さんがみんな見学していた。
そんなに見せるようなものじゃないんだけど……。
毎度のことだけど、手加減の仕方を考えないといけないのがね……。
考えた結果、僕は向こうと同じ土俵で戦うことにした。
『聖剣アルフレッド』を取り出す。注いだ魔力で威力を自在に変えられる聖剣だ。
アレンさんは『雷神剣タケミカヅチ』のようだ。サクラさんが渡したのかな?
「おや?ソラ様から剣術をお教えいただけるとは……。 しかしこれでもサクラに日々鍛えてもらい、皆から剣聖と呼ばれるくらいの実力は持っているつもりですが……」
「……多分大丈夫だと思いますよ」
バチバチと唸る雷神剣。
「では、胸をお借りします」
距離を詰めるアレンさん。
僕は聖剣にほどほどに魔力を込め、ぶつける。
「っ!?」
ひとたび剣を交えると、アレンさんの顔つきが変わった。
「くっ、なるほど。 こんなに一撃が重いとはっ! ですが、見くびらないでいただきたい!」
アレンさんは鍔迫り合いから剣をはじき返すと、剣術特有の『技』を出し始める。
急に腕の動きが早くなると、片足を踏み込み左切り上げをする『砂塵巻き』を繰り出してくる。
僕はそれを上から覆い被さるように刃を合わせ弾く。
アレンさんは弾かれた勢いをうまく使い、時計回りに回転し威力を上げた『回転切り』を繰り出す。
僕はそれに合わせ、剣を水平にして鍔迫り合う。
アレンさんは魔法強化型の剣士なのか。
今度はこちらがはじき返し距離を置くと、予想通り剣を振り下ろし雷斬撃で衝撃波を出す『雷撃波』を撃った後、飛び跳ねて『大車輪』の準備をした。
身体強化で雷の衝撃波を左に避けると、飛び上がったアレンさんは体ごと回転し、重力と遠心力の合わさった重みのある斬撃を繰り出してくる。
膝をついて少し強めの魔力を注ぎ下から斜めに受け、そのまま上にはじきアレンさんは宙を舞う。
「この一撃を押し返してくるのですか! 素晴らしいッ!」
なんか剣を交えてるときのアレンさん、だんだん学園長みたくなってない……?
アレンさんは足を地に降ろすと、足腰を強化して地を蹴り、その勢いで『突進突き』を放ってくる。
僕はリンボーダンスのように体を反らしてその突きを避けると、残った足を狙って地面スレスレを水平に切る『水面切り』の構えに入った。
反らした体をそのままきれいにバック転へとつなげて足切りをすんでのところで回避した。
距離を撮る僕にアレンさんは『雷撃波』をもう一度出し、自らにブーストをかけて縦の衝撃波と一体となった横の斬撃を繰り出す――『雷十字斬』という技だ。
ちょっとずるいが、最大強化した聖剣を十字の斜めになるように合わせて雷撃波を雷神剣もろともはじき返す。
突っ込んできたアレンさんの勢いをそのまま使うことにしよう。
足を上げてそのままアレンさんの首に絡めつき、そのまま前転する。
強化した片手で地を蹴り、その勢いでくるっと回り足を地面に振り下ろす。
アレンさんを足でつかんだまま、まるで柔道の投げ技を足でやるかのようにきれいに投げおろした。
「ぐっ……!?」
アレンさんの手を離れた雷神剣は最後の聖剣の鍔迫り合いで真っ二つとなっており、地面に刺さる音が聞こえた。
しまった……またやりすぎた。
剣を砕くつもりはなかったんだけど、ついゲームの時の癖で……。
「ま、参りました……」
「う……うおおおお!?」
「大聖女様が隊長に剣術で勝ったああああ!?」
歓喜の声が聞こえてくる中、僕はアレンさんにヒールをする。
「ごめんなさい。 今直しますから……」
「ありがとうございます。 しかし流石ですね。 魔術だけでなく、剣術まで一流であらせられるとは……」
「一応一通りの武器は使えるつもりです。 ただ剣術は苦手な方なんですけどね……」
「ご謙遜を」
いや、本当だってば……。
「『技』はサクラさんから伝授されたんですか?」
「ええ。 剣は使ったことないらしいですが、『技』は見たことがあるそうなので、いくつか教えてもらいました」
「なるほど。 しかし、アレンさんは強化型の剣術使いですよね? どうして『雷神剣』を使っているんですか?」
「ああ、これはサクラにもらったんです」
「いえ、そういうことではなく……どうして属性剣を使っているんですか?」
「……ええと?」
え、そこからなのか……。
もしかして、エバ聖の剣に詳しい人、今までいなかったのかな?
僕は雷神剣を直し終えると、置いていた聖剣を取り、アレンさんに渡す。
「これは強化剣の最高峰、『聖剣アルフレッド』。 これをアレンさんに差し上げます」
「そんな貴重なものを……」
「いや、腐るほどあるので気にしないでください……。 大事な剣を砕いてしまったお詫びです」
「え……?」
「そっ、それより! それで身体強化をしてみてください」
「は、はい。 ……ふっ! うぉっ!?」
「雷神剣より身体強化がしやすい上に、強化率も倍くらい違うでしょう?」
「これは、すごいですね……!」
「強化剣は剣の強化だけでなく、自己強化の補正も上がる上、必要魔力が少なく済みます。 ですからアレンさんの戦闘スタイルには、その剣が合っているはずです」
「初めて知りました……。 ソラ様は博識でいらっしゃるのですね。 この聖剣、大切に使わせていただきます」
「はい」
「おい、誰か! 手合わせをしてくれ!」
「か、勘弁してくださいよ、隊長!」
試してみたいのはわかるけど、困らせるのはやめた方がいいと思う……。
◆◆◆◆◆
模擬戦が終わると、親衛隊の皆さんがそれぞれ感想を述べていた。
「それにしてもすごかったな……」
「大聖女さまの……脚……」
えっ、脚!?
「俺も大聖女さまの足に絡まってみたい……」
なんでよっ!?
同性にそういわれるのは流石にぞくっとするのでやめてほしい……。
「おま……な、何言ってるんだ!?」
いや、アレンさんは同性なのわかってるよね……?
そこで顔を赤くしないでよ……。
それから興が乗った僕はアレンさんに頼まれたこともあり、休日を潰して親衛隊の皆さんの装備やトレーニングメニュー等の見直しを行ったのだった。




