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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第2章 一新紀元

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第31話 就学

 朝。


「あとちょっと……」


「ふふ、お寝坊さんですね。 起きてくださいませ♪」


 優しい声に起こされ目を開けると、エルーちゃんがいた。


「ふわぁっ……。 おはよう、エルーちゃん……」


「おはようございます、シエラ様」


 そっか。

 僕は今、シエラとして、女学園の寮に居たんだった。

 こんなところに来て女装してしかも偽名を使っているなんて、バレたら一巻の終わりだ。

 だからもう少し気を引き締めないといけない。


 エルーちゃんはこんな朝早くでもきちんと先に起き、にっこりと微笑みを返す余裕さえあるなんて凄いと思う。


「さ、着替えて下に向かいましょう!」


 そう言うも、部屋を出ていく様子はない。


「あの……着替えたいんだけど……」


「……あっ。 ……失礼いたしましたっ!」


 そそくさと出ていき、ばたりと扉を閉める。

 エルーちゃん、たまに僕の性別忘れてることない……?



 ◆◆◆◆◆



 着替えて下に降りると、フローリアさん、ミア様、ソーニャさんがいた。


「「おはようございます」」


「おはよっ!」


「おはようございます。 シエラちゃん、エルーシアちゃん」


「……おはよう。 くあぁ……」


 ソーニャさんは朝に弱いのかな?


「ええと……エレノア様は?」


「ああ……(じき)にわかるよ」


 するとまもなく、ビリビリビリとけたたましい音が聞こえてきた。

 あ、あれが目覚まし……!?

 一階に居てもうるさいと感じるくらいの騒音なんだけど……。


「エレノア様はいつもああなの。 さ、朝食の準備をしましょ!」



 ◆◆◆◆◆



 朝食の準備をしていると、やがてエレノア様が目を擦りながら降りてきた。


「おあよ……」


 オーバーサイズのTシャツに毛筆で大きく『惰眠』と縦書きされている。

 こういうTシャツって見かけると衝動買いしたくなるよね……。


 いや、それより……下履いてないの……?

 時々見えてはいけない布がチラチラと見えてしまっている……。


 ずぼらさだけでいえば姉といい勝負だけど、流石に姉と比べるのは失礼だろう。

 頭の良さも可愛さも比べるまでもない……。


「さ、食べましょ。 いただきます」


「「いただきます」」


 挨拶を済ませたあと、ミア様の号令で朝食を食べる。

 朝食はハムエッグとトーストだった。


「おいしい……」


「よかった……。 実は、貴族の子ってなかなかここに来ないから、味に満足してくれるか心配だったの」


 むしろ元の世界の僕は貴族でもなんでもなかったからね……。


 朝食後はみんなで学園に向かう。

 人に会わないように一人で登校して、一人で帰宅するようにしていた僕からしたらあり得ない光景だった。


「じゃあね。 お互い新学期頑張りましょ」



 ◆◆◆◆◆



 ――授業は正直、少し退屈だった。


 僕は高校一年生の途中で転移してきた。

 こっちの世界ではすぐ新学期だったから、年代だけでなく季節もずれていたせいで2回目の高校一年生の春をすることになったのだ。


 だから、数学などの元の世界と同じ学問は既に学んでいたところになる。

 とはいえ数学の授業中に聖女史の教科書を開くようなことはしたくない。

 今度図書室で2年生の参考書でも探しておこうかな……。


 対して、向こうの世界にはない魔物学の授業は新鮮で面白い。


 どの教科も、僕が悪目立ちしているからなのか分からないけど、先生は僕に当ててくることが多かった。


「ケルベロスとはどんな魔物かわかりますか? ……ではシエラさん、お答えください」


「はい。 ケルベロスは魔王の眷属で魔王が現れた際に出現する魔物です。 四足歩行で首が3つあり、左から炎、水、雷属性と、それぞれの顔ごとに異なるブレスを使うのが特徴です」


「では、ケルベロスに出会ったらどうしますか?」


 魔物学のロザリー先生は少しにやけながら質問をして来た。

 少し意地悪な質問だったのかな?


「ケルベロスは前方には強いですが、背後を取られるとなにもできなくなります。 ですから、二人いる時は片方が引寄せ役で片方が背後を取るように捕まえて心臓のある胴体を切り落とします。 一人の場合、ケルベロスは首があまり上には曲がらないので、頭上から攻めると攻撃を受けずに胴体を叩くことができます」


 聖女(プレイヤー)ならケルベロスの倒しかたなんて数えきれない程あるけど、聖女特有の倒しかたの話をしても意味がない。


「す、素晴らしい……! まるで、戦ったことがあるかのような解説ですね!」


 ケルベロスとは腐るほど戦ったからね……。



 ◆◆◆◆◆



 授業が終わり、帰りの支度をしていると、廊下から黄色い声が響いてきた。


「きゃあああっ!」


「リョウカ様、リョウカ様よっ!」


 リョウカ様って……いかにも漢字の名前だよね?

 聖女以外にも、日本名の人っているんだ……。


 すると廊下から現れたのは、聖徒会室で出会ったあの凛々しい女性だった。


「すまない、人を探しているんだ……ああいた」


「あっ……!」


 真っ直ぐこちらに来たリョウカ様は笑みを浮かべこう言った。


「シエラ君、で合っているかな?」


「は、はいっ!」


「初めまして、私は2年聖徒会副会長の()()()()・リョウカ。 シエラ君、エルーシア君。 聖徒会長がお呼びだ」

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