第300話 門出
「じゃあ四人の新入生とエレノア様の門出に」
「「「乾杯!」」」
今日はジュースを囲んでパーティーだ。
「寮も大人数になり、賑やかになったね」
「私とエレノア様だけだったのに、こんなに増えて……。私は嬉しいよ……!」
しっぽフリフリしているミア様。
「今年はめでたいことが続いてるからね。これもソラ君のおかげさ」
チラっとこっちを見ないでよ。
……隠してくれる気あるの?
「それにしても卒業式で見た真桜様、可愛かったわ~!」
「い、いいなぁ……」
「でも遠巻きだったから……。シエラちゃんとエルーちゃんは挨拶したことあるんでしょ?」
「ええっ!?」
ハナちゃんのいちいち驚く仕草がなんだか可愛い。
「羨ましいのです。真桜様とお会いしたときのお話、もっと聞かせてください!」
「シエラ君からは聞かない方がいいよ。どうせお手々が可愛かったとかお声が可愛かったとか、ロリコンめいた感想しか言わないだろうから」
「……」
エレノアさん、僕でも傷つくときは傷つくんだよ?
で、でも気持ち悪いなら言わなくてよかった……。
「エルーちゃんはどう?抱っこした?」
「いいえ。抱っこはさせていただけませんでしたが……。その……」
僕はまさかここで、エルーちゃんからとんでもない発言がぶっ込まれるとは思っていなかった。
「真桜様からは貴重な『無詠唱魔法』をご披露いただきました」
「えっ……」
不意打ちすぎて、みんな唖然。
そして僕自信も唖然。
「「む、無詠唱魔法!?」」
好奇心が驚きに勝り同時に硬直を解いたのは、僕とエレノアさんだった。
「シエラ様も、ご存じなかったのですか……?」
「そ、そんなことができるなんて、知らなかった……」
それからのことはあまり覚えていないが、僕はエレノアさんと目配せして、二人で頷いていた。
翌日。
「もう、起きてください。お昼過ぎちゃいますよ」
あの目覚ましがないと、本当に起きれないんだな……。
僕が起こすのはリリエラさんを起こしたときに不味いことだとわかったので、今回はおとなしく助っ人を呼ぶことにした。
「もう、最後までお寝坊さんなんだから……。こんなんで王家に戻して大丈夫なのかしら?」
まあ、あのアレクシア女王も同類だからね……。
そんなところ遺伝してほしくなかったけれど。
「ほら、起きなさい」
問答無用で布団をどけると、無意識に布団を戻そうとするので、そのまま引っ張り上げてお姫様抱っこをする。
流石長いこと寮母さんをやっているだけはある。
僕には到底できない芸当だ……倫理的に。
「ありがとうございます、フローリアさん」
「……おあよ」
お姫様抱っこを僕に見られるのは恥ずかしかったのか、エレノアさんは頬を赤らめていた。




